公取委がコンタクトメーカーへの処分免除、確約手続について
2020/06/08 コンプライアンス, 独占禁止法
はじめに
公正取引委員会は4日、コンタクトレンズメーカーの「クーパービジョン・ジャパン」(港区)から改善計画の提出を受け、行政処分を免除した旨発表しました。同社は小売店にインターネット販売等の制限を行っていたとのことです。今回は独禁法違反の疑いが生じた際の確約手続について見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、クーパービジョン・ジャパンは1日使い捨てコンタクトレンズと2週間頻回交換コンタクトレンズの販売に関し、小売業者に対して広告への価格表示を行わないよう要請していたとされます。また医師の処方を受けた者へのインターネットによる販売も行わないよう要請していたとのことです。これに対し公取委は独禁法が禁止する不公正な取引方法に該当する疑いがあるとして立ち入り検査を行っておりました。同社は上記行為をすでに行っていないこと、今後3年間行わないことを周知徹底する旨の確約計画を提出したとされます。
確約手続とは
確約手続とは、特定の独禁法違反の疑いが生じた際に公取委と事業者との間の合意により解決する仕組みを言います。環太平洋パートナーシップ協定(TPP協定)及びTPP11協定の締結に伴い導入された制度で、競争上の問題の早期是正、公取委と事業者が協調的に問題解決を行う領域の拡大を目的としていると言われております。
確約手続の流れ
公取委は不当な取引制限や不公正な取引方法など独禁法違反の疑いがある場合に、公正かつ自由な競争の促進を図る上で必要があると認めるときは確約手続に付すことができます。違反行為の概要と適用法令が事業者に通知され、60日以内に事業者が確約計画を自主的に作成して提出すると、それが違反状態を排除するに十分であること、確実に実施されると見込まれることが認められた場合に公取委によって認定されます。認定がなされることによって排除措置命令や課徴金納付命令は免除されることとなります。なお入札談合や価格カルテル、過去10年以内に同じ違反を行っていた場合、刑事告発相当の悪質事案の場合は対象外となります。
確約計画の内容
事業者が公取委に提出する確約計画には次のような確約措置を盛り込む必要があります。①違反被疑行為を取りやめること又は取りやめていることの確認、②取引先・利用者等への通知又は周知、③コンプライアンス体制の整備、④契約変更、⑤事業譲渡等、⑥取引先等に提出させた金銭的価値の回復、⑦履行状況の報告などが典型例として挙げられております。なお必ずしもこれらに限られるものではないとされ、企業結合の場合等では企業結合審査に関するガイドラインなども参考になると言われております。
コメント
本件でクーパービジョン・ジャパンは小売業者にインターネット販売や、広告での価格表示をしないよう要請していたとされます。これらの行為は不公正な取引方法の一つである拘束条件付き取引に該当しうるものと言えます。同社は確約計画として、すでに被疑行為を行っていないことの確認、小売業者に通知、従業員への周知徹底、独禁法遵守についての指針の策定と周知徹底、定期的な研修と法務担当者による監査、毎年公取委に履行状況を報告する等を盛り込み提出したとされます。このように確約手続は従来の排除措置命令や課徴金納付命令による是正よりも自主的で穏当な解決方法であり、一般消費者からの印象も処分を受けるよりも良好と考えられます。公取委から通知を受けた際には積極的に検討してみることが重要と言えるでしょう。
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