パワーハラスメント防止法施行を受けて、法務担当者としてやるべきこと
2020/01/31   労務法務, 法改正対応, 労働法全般

1.はじめに

働き方改革の一環としての労働施策総合推進法の改正により、パワハラ防止対策が法制化されることとなりました。この法律は、早い企業では2020年6月に適用されます。そこで、以下では、改正の詳細及び法務部員として探るべき対応をご紹介していきます。
  参照:概要:パワーハラスメント防止対策の法制化について
     条文:労働施策総合推進法(改正) 

2.適用時期

大企業:2020年6月
中小企業:2022年4月(2019年6月5日から2022年4月までは努力義務)

・中小企業
 卸売業:資本金又は出資の総額が1億円以下もしくは従業員数が100人以下
 サービス業:資本金又は出資の総額が5000万円以下もしくは従業員数が100人以下
 小売業:資本金又は出資の総額が5000万円以下もしくは従業員数が100人以下
 上記以外の業種:資本金又は出資の総額が3億円以下もしくは従業員数が100人以下
・大企業=上記以外の会社
参照:中小企業基本法

3.労働施策総合推進法改正の背景

昨今、パワハラを原因とする、精神疾患による労災保険の支給件数の増加や離職が取り沙汰されるようになりました。そのような中、2015年12月に発生した、電通の女性新入社員が自殺した事件において、パワハラも自殺の背景にあったと考えられています。
その改革の1つとして、パワハラの防止へも意識が向けられるようになり、労働施策総合推進法改正にパワハラの防止が盛り込まれることとなったように考えられます。

4.労働施策総合推進法改正の詳細

パワーハラスメントの定義:
①優越的な関係を背景とした
②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により
③就業環境を害すること
となっております。(改正労働施策総合推進法30条の2第1項参照)

そのうえで、
当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備や雇用管理上必要な措置を講じなければならない(改正同法30条の2第1項)、として、雇用主に対し防止措置義務を課しています。
さらに、
事業主は、労働者が前項の相談を行ったことや、事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、その労働者に対して解雇などの不利益な取扱いをしてはならない(以上、改正同法30条の2第2項参照)
と不利益な取り扱いを禁止しております。

また、違反した場合については、
厚生労働大臣から、事業主に対して、助言、指導又は勧告をすることができるとし、この勧告に従わなかったときには、その旨を公表することができる。
としています。(以上、改正同法33条1項、2項参照)

5.コメント

この法律のポイントは、法律によってパワハラの定義が明記されたこと、パワハラの防止のための措置を雇用主が取ることを法律に明記されていることです。
また、この法律に違反した場合には、罰則はないものの、助言、指導、勧告、公表などの行政措置を事業主が受けうるという点も従来との大きな変更点であると考えられます。

このように違反した場合に行政上の措置を受けるという不利益もありうることからも、法務担当者としては、何らかの措置を取ることが求められます。例えば、以下のような措置が考えられるでしょう。
・パワハラの相談体制についての措置
  相談窓口を社内(人事など)および社外(通報窓口など)に設置すること
  相談窓口の存在を社内に周知すること
  パワハラが実際に発生した際の担当者が対処方法をマニュアルに落とし込むこと
  社内アンケートを実施して、実態を把握すること
 ・パワハラを防止するための措置
  管理職に対するコンプライアンス研修の強化
  社内規則にパワハラの定義・パワハラがなされた際の措置などを明記し、社内規則の存
  在を周知すること
 ・不利益な取り扱いの防止
  パワハラの事実を通報した方の素行・業績などを理由として措置を取る場合には、パワ
  ハラを通報したという事実以外の客観的な証拠を取り揃えること
 参照:No ハラスメントリーフレット

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