小田急が第87回社債発行、社債のメリット・デメリット
2020/01/15   商事法務, 会社法

はじめに

 小田急電鉄は第87回無担保社債を発行する予定であることがわかりました。申込期間は2020年1月14日~30日で総額100億円とのことです。今回は会社の資金調達方法の一つである社債の発行手続きとメリット・デメリットを見ていきます。

事案の概要

 報道などによりますと、小田急電鉄は社債総額を100億円として第87回無担保社債「小田急箱根ゆけむりボンド」を発行する予定とされます。発行価格は額面100円に対し100円で償還金額も同額、利息は0.1%で申し込み期間は今月14日~30日、払込期日は翌31日とのことです。償還期限は2023年1月25日となっております。

社債とは

 社債とは会社を債務者とする金銭債権を言います(会社法2条23号、676条)。新株発行、金融機関等からの借入と並ぶ会社の資金調達方法の一つです。新株発行と同様に証券会社を通じて広く大衆から募集する場合と、公募はせずにごく少数の機関投資家などを対象とするいわゆる私募債があります。また社債の種類としては、償還期日までに利息を受取り、償還期日に元本が返済される「普通社債」、株式と交換可能な「転換社債」、新株予約権付社債である「ワラント債」などがあります。以下発行手続きを具体的に見ていきます。

社債発行手続き

 社債の発行は募集株式発行と違い業務執行の一環として取締役会の専決事項となっております(362条4項5号)。原則として取締役に決定を委任することはできませんが、基本的な事項以外の細目を委任することは可能です(施行規則99条)。①募集社債の総額、②社債1口の額、③利率、④償還期限、⑤利息の支払方法と期限、⑥社債券発行の有無、⑦払込金額と払込期日などを決定し申込みをしようとする者に募集事項を通知します(677条1項)。社債引受の申し込みを受けたら、それぞれ社債の金額と数を割り当て通知します。株式と異なり払込が未了であっても割当てた時点で社債は成立となります(680条)。株式発行時の出資と違い分割払いとすることも可能です(676条12号、施行規則162条1号)。また各社債の額が1億円以上の大口社債のみである場合や社債権者の数が50人未満の少数である場合をのぞき原則として社債管理者の設置が必要です(702条)。

社債のメリット・デメリット

 資金調達方法として社債のメリットとしてはまず株式発行と違い経営に関与されることが無いということが挙げられます。株式を発行すれば会社の実質的所有者である株主が増えますが、社債は単に債権者が現れるだけだからです。次に金融機関からの借入に比べ担保や保証人を用意する必要がなく、また返済期限や利息などを債務者である会社側が任意に決定できるという点も挙げられます。また公募債ではなく私募債にすれば発行費用も低く、社債管理者も不要となりコストを削減できます。一方デメリットとしては、株式の発行と違い、あくまで債権であることから償還期限が到来すれば元本を一括返済する必要があります。そのため財務状況が悪いなかでの資金繰り目的では活用できないということです。

コメント

 本件で小田急電鉄は総額100億円で1口100万円とする無担保社債を発行します。無担保社債とは会社が破綻した際には社債の償還が保障されていない社債を言います。償還期限は3年後の2023年1月25日で社債管理者をみずほ銀行、三井住友信託、三菱UFJ信託とする公募債です。かなり大口の公募債ですが、上記のように限られた範囲の機関投資家などを対象とした私募債なら社債管理者も不要でより低コストでの発行も可能です。また払込金額を償還額よりも低くする代わりに無利息としたり、逆に払込金額を高く設定する代わりに高利率にするといった会社の信用力などに合わせた柔軟な設定も可能です。以上のように社債発行は新株発行や借入とは違ったメリット・デメリットが存在します。自社の現状や必要な資金の額などに合わせて最も適切な資金調達を選択していくことが重要と言えるでしょう。

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