アパレル会社役員らを逮捕、詐欺再生罪とは
2019/11/21   コンプライアンス, 倒産法

はじめに

アパレルメーカー「アートヴィレッヂ」(東京)の民事再生手続きで会社の資金を流用した上、預金残高を改ざんしたとして警視庁は同社役員ら4人を民事再生法違反の疑いで逮捕しました。

4人は容疑を認めているとのことです。
今回は民事再生法等で規制されている詐欺再生罪について見ていきます。

事件の概要

報道などによりますと、若者向けカジュアル衣料の販売を手掛けるアートヴィレッヂ社は資金繰りが悪化し、2015年4月に民事再生手続き開始決定を受けておりました。

同6月に同社の小売業を承継する会社が設立されましたが、同社の資金約2億円が承継会社に流出していたとされます。
同社の役員で承継会社の実質的経営者の栗原容疑者(57)は2016年~17年に民事再生手続きを担当していた弁護士に、実際には10万円しか残高がないにも関わらず約1億円の残高があるように改ざんした通帳のコピーを提出した疑いが持たれております。

詐欺再生罪とは

民事再生法255条1項によりますと、再生手続開始の前後を問わず財産を隠匿・破壊、不利益に処分する行為は詐欺再生罪として10年以下の懲役、1000万円以下の罰金またはこれらの併科となっております。

民事再生に限らず倒産手続きが開始した場合、その時点で債務者が保有している財産を管財手続きのもとに債権者に配当されたり、また事業再生の原資に当てられることとなります。

ここで債務者が財産を隠匿したり他に流出させた場合、もともと満額の債権回収ができなくなっている債権者をさらに害することとなります。
そこで民事再生法だけでなく破産法(265条1項)や会社更生法(266条1項)でも同様の規定が置かれ財産隠匿などの行為が禁止されております。

詐欺再生罪の要件

(1)行為の時期
民事再生法255条1項では「再生手続開始の前後を問わず」とされており、必ずしも再生手続開始決定がなされた後に限られません。

厳密な時期はありませんが、資金繰りが厳しくなり倒産が濃厚となってきた段階での行為であれば該当する可能性は高いと言えます。
逆にまだ十分余力がある段階では該当しないと言えます。

(2)行為類型
上記の時期に「債権者を害する目的」で、①財産を隠匿しまたは損壊する行為、②財産の譲渡または債務の負担を仮装する行為、③財産の現状を改変して価格を減損する行為、④財産を債権者の不利益に処分、または不利益に債務を負担する行為を行うと詐欺再生罪に該当するとされております。
不当に財産を減少させたり、さらに債務を増加すると言った行為です。

(3)協力者
債務者自身以外にも管理命令や保全管理命令が発せられたことを知りながら、管財人の承諾その他の正当な理由なく債務者から財産を取得した者も同様に詐欺再生罪に該当するとされております(同2項)。
つまり協力者も同罪ということになります。

報告・検査の拒絶等

民事再生手続きにおいて虚偽の報告や報告の拒絶、検査の拒絶をした場合は3年以下の懲役、300万円以下の罰金またはこれらの併科となる場合があります(258条1項、2項、3項)。
再生管財人等に提出すべき報告書等を偽造するといった行為が典型例と言えます。

コメント

本件でアートヴィレッヂ社の役員らは民事再生手続き開始決定を受けた後、同社の資金約2億円を事業承継会社の資金に流用し、その事実を隠蔽するために通帳のコピーを改ざんして担当弁護士に提出していた疑いが持たれております。

直接の逮捕容疑は報告書の偽造ですが、これらの行為は詐欺再生罪に該当する可能性が高いものと言えます。
本件では民事再生法違反の容疑となりましたが、上でも触れた通り破産法や会社更生法にも同様の規定が存在し、一般的には破産法での違反事例が多いと思われます。

こういった倒産に伴う財産隠し等による立件は年間20~30件に上ると言われており、倒産法の罰則の中でも最も重いものとなっております。
倒産手続きでの債務者の財産調査は徹底されており隠し通すことは不可能と言えます。
会社の再建を検討している場合にはこのような行為が行われないよう慎重に準備していくことが重要と言えるでしょう。

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