制度発足から2年、法定相続情報証明制度について
2019/10/21 行政対応, 民法・商法

1.はじめに
各種金融機関や有価証券を取扱っている企業にとって、顧客の情報管理はとても慎重かつ丁寧な対応が求められます。
ましてや、顧客の複数名の相続となると相続に関する書類は、膨大となります。
企業の抱える相続案件といえば、具体的には、株式や投資信託における名義変更が挙げられます。
そのような手続きでは準備書類が大変多いため各種金融機関や企業側にとって、それらの書類を精査する負担が大きくなるばかりでなく、それらの書類を集める顧客側の負担も大きくなります。
また、相続に関する書面に基づいて名義変更手続きがなされている間は、顧客に対して原本が返却できません。
したがって手続きごとに時間がかかります。
また顧客側にとっては、同時進行で手続きを進める場合、1名の相続人に対する相続関係書類だけでも戸籍謄本や住民票等、複数の書類が必要となり、コスト面でも時間的負担の面でも、手間がかかります。
このような両者の相続手続きのスムーズ化を図った「法定相続情報証明制度」を活用すると、以前よりも簡単に相続による名義変更が可能です。
※参照:
新しい相続手続「法定相続情報証明制度」とは(日本司法書士連合会ホームページ)
「法定相続情報証明制度」について(法務局ホームページ)
2・「法定相続情報証明制度」とは
この制度は、2017年5月29日に民事局から各法務局への通達によって制度化されたものです。
この制度を申請できる申出人は、被相続人の相続人(又はその相続人)に該当する方です。
申出人は、法務局に対して、戸籍謄本等の書類の束とともに法定相続情報一覧図の保管を申し出ることにより、以後5年間、無料で何通でも法務局による認証が付された法定相続情報証明(法定相続証明一覧の写し)の交付を受けることが出来ます。
申出人は、この法定相続情報証明書を一枚提出することにより、相続財産の預貯金の名義変更、解約手続き、証券会社の株式名義変更、保険金の請求、保険や車の名義変更、相続税の申告に関する相続手続きを一括で行うことが出来ます。(ただし、相続税の申告の場合には、図形式で実子と養子に区別できるものに限ります)
この法定相続情報証明書は、相続登記業務においては、一般的に用いられている書面です。
戸籍謄本の束の代わりとしての添付書類としての登記原因証明情報の部類で申請することが出来ます。
3.申請するには
「法定相続情報証明制度」を利用するには、申出人側が、被相続人の本籍地又は最後の住所地、申出人の住所地の管轄の法務局に事前に、申出書と法定相続情報一覧図及び添付書類(被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本と住民票の写し、相続人の戸籍謄本、住民票の写し等)を提出する必要があります。
法定相続情報一覧図については、申出人自身が作成します。
作成方法については、法務省のホームページに記入用フォーマットと記載例がありますので以下を参考にしてみてください。
代理人による申し出を行う場合には、委任状の添付が必要です。
親族が代理人となる場合には、委任状に加え申出人と親族関係が分かる戸籍謄本の添付が必要です。
※参照:
主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例(法務省ホームページ)
4.コメント
「法定相続情報証明」の制度については、法務局が管轄であることから、法務局及び全国の司法書士会が、積極的に周知を行って参りました。
大手金融機関においても、法的手続きに臨機応変に対応している場合には、顧客に対する情報提供を行っている場合もあります。
ですが、まだまだこの制度に対応できていない金融機関、企業もあるのが事実です。
それにしたがって、顧客側もこの制度を知ることなく面倒な手続きを強いられている場合があります。
そこで、2017年から2年あまり経過した今、改めてこの話題に触れることにしました。
この記事によって、少しでも相続手続きに伴う諸手続きが効率よく行える手助けになりましたら幸いです。
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