日清食品がカップ麺専用フォークをネット販売、ネット広告の特定商取引法上の注意点
2019/10/16   広告法務, 特定商取引法

1、はじめに

 カップヌードルで有名な、日清食品はカップ麺向けの専用フォーク「カップヌードル THE FORK(ザ フォーク)」を開発しました。この商品は、カップ麺とセットで、30日から公式通販サイトで3千個の数量限定として販売されます。このように、日清食品に限らず多くの企業がネットで販売をする傾向にあります。もっとも、このようなネットで販売の法的規制の特殊性についてはあまり知られていません。そこで、ネットでの販売について規制している,特定商取引に関する法律(以下、「特定商取引法」という)の中で、ネット販売業者が表示しなければならない広告及び誇大広告について説明します。

参照:
「日清食品、カップ麺の専用フォーク ネット販売へ」日本経済新聞
日清食品HP

2、ネット販売において表示しなければならない広告

 ネット販売で表示しなければならない広告については、特定商取引法11条において記載されています。

・同条1号

 販売する商品・権利の販売価格、提供する役務の対価、販売商品の送料を記載することが義務付けられています。商品の価格がいくらなのかを記載することは当然といえることでありますが、送料について記載し忘れることもあるかもしれませんので注意が必要です。

・同条2号

 販売する商品・権利の代金、提供する役務の対価の支払い時期・方法について記載することが義務付けられています。消費者に対して、いつ、どのような方法で支払うことになるのかを示すことは、企業にとっては代金を回収するうえで重要なことと思われますので、明示することが必要です。

・同条3号

 販売商品の引き渡し時期、権利・役務の移転・提供時期を示すことが義務付けられています。引き渡し時期や移転時期を示すことで、消費者はいつ商品を受け取ることができるかわかりますが、反面で企業は履行遅滞にならないように注意することが求められると考えられます。

・同条4号 

 申し込みの撤回・売買契約の解除について記載することも必要です。

・同条5号

 経済産業省令で定めることを記載することが義務付けられています。主なものとして、事業者の名称、住所、電話番号や代金以外で消費者が負担する金銭等があげられます(特定商取引に関する法律施行規則8条各号参照)。このように、消費者を保護するための事項の記載も求めれています。

 そして、上記事項を記載しなかった場合、主務大臣からの必要な措置をとるべきことを求める指示が出されたり(特定商取引法14条)、業務停止命令(特定商取引法15条)や禁止命令(特定商取引法15条の2)が出されたりするおそれがあります。

 もっとも、消費者からの請求を受けて、特定商取引法11条記載の事項について記載した書面を遅滞なく提供する旨の表示をすれば、上記事項の一部を省略することができます(特定商取引法11条但書)。

 このように記載すべき事項が多数あるため、法務担当者としては、これらの記載事項が広告に記載されているか注意する必要があります。

参照:
解約どっとねっと

3、誇大広告の禁止の内容と事例

 誇大広告が許されないということは、世間一般に知れ渡っているといえそうです。しかし、具体的にどのような広告が誇大広告に当たるのでしょうか。

 同法12条において、誇大広告とは「著しく事実に相違する表示」「又は実際のものよりも著しく優良であり」「若しくは有利であると人を誤認させるような表示」とされています。ここでいう「著しく」という文言は抽象的であるため、個別具体的に判断していくことになります。具体例としては、

「URL上のウェブサイトにおいて『ニオイの原因菌99.9%殺菌!』と記載し、あたかも、本件商品を使用することにより、臭いの原因菌が99.9%殺菌されるかのような表示」(消費者庁release)

をして広告したことが、誇大広告に当たるとして、業務停止命令を受けたという事例があります。。

また、2018年に東京都が

「『毎月最低30万円のビットコインを受取り続けることが出来る』『あなたは完全に“ほったらかし”の状態で、毎月お金が受け取れる』などと広告し、容易に高額の収入が得られるとうたうアプリ等を販売している事業者に対し、特定商取引に関する法律に基づき、3か月の業務の一部停止を命じ」(東京都HP)

た事例もあります。このように、「すぐに」とか「必ず」といった断定的な表現や「最低○○円受け取れる」といった誰にでも当てはまるような表現は避けた方が良いと思われます。また、上記のように99.9%のように具体的な数字を出す際にも、自社の製品がその数値を満たしているという具体的な根拠があるのか否かを精査する必要があると思われます。法務担当者としては、断定的な表現がなされていないか、誰にでも当てはまるような表現が記載されていないか等を意識しながら、誇大広告に当たらないかをチェックすべきであると考えられます。

 また、これに違反した場合、同法11条同様に主務大臣の指示(特定商取引法法14条)、業務停止又は禁止命令(特定商取引法15条、15条の2)が出されるおそれもありますし、100万円以下の罰金に処される(特定商取引法72条1項1号)おそれもあります。

参照:
弁護士法人ピクト法律事務所
消費者庁資料

4、コメント

 現在は、ネット販売を行う企業が増加する傾向にあります。そして、ネット販売をする場合は、広告を出すことになりますが、その際は上記のようなルールを守って正しい広告を出すようにしないと、企業が行政処分を受けることになってしまい、その結果、企業の評価が下がり取引先や顧客が離れていくなどの損害を企業に与えることになるおそれがあります。法務担当者としては、顧客を広告の誤認から守るのみならず、自社を損害から守るためにも、自社の広告が適法になされているのか否かについて、様々な角度から注意深く検討することが求められると考えております。また、何を広告に表示しなければならないか、どのような広告が誇大広告になってしまうのかも判断は、特定商取引法の法的素養が必要なものであり、特定商取引法違反の自社への影響も大きいため、法務担当者が主導権をとって広報担当者と交渉していくことが求められていくと思われます。

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