エディオンに対する課徴金が減額、優越的地位の濫用と課徴金について
2019/10/11 コンプライアンス, 独占禁止法
はじめに
公正取引委員会は4日、家電量販店「エディオン」に対し2012年2月16日に出していた課徴金納付命令を審判手続により一部取り消した旨発表しました。
約10億円の減額となります。
今回は独禁法が規制する優越的地位の濫用とその課徴金について見ていきます。
事案の概要
公取委の発表などによりますと、エディオンは平成20年9月頃から平成22年11月29日までの間、同社と継続的な取引関係にある納入業者127社に対して、新規開店、店舗改装などに際しそれにかかる人件費や経費などの負担をすることなく従業員の派遣をさせていたとされます。
作業内容はエディオン側の指示に従い、納入した製品の梱包、コンテナへの収納、運搬、開梱、陳列などとのことです。
これに対し公取委は排除措置命令とともに40億4796万円の課徴金納付命令を出していました。
優越的地位の濫用とは
独禁法2条9項5号によりますと、「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に」次の行為を行うことを優越的地位の濫用に当たるとしています。
①継続して取引する相手方に取引にかかる商品または役務以外のものを購入させること。
②継続して取引する相手方に、自己のために金銭、役務その他経済上の利益を提供させること。
協賛金を提供させたり、無償で従業員を派遣させ、棚卸しや店舗改装の労務にあたらせるといった行為が典型例と言えます。
優越的地位の濫用の成立要件
公取委が発表しているガイドラインによりますと、「自己の取引上の地位が相手方に優越している」とは、自社との取引の継続が困難になることが相手方にとって事業経営上大きな支障を来すため、相手に著しく不利益な要請等を行っても相手が受け入れざるを得ないような場合を言うとしています。
その判断にあたっては両者の取引依存度、市場における地位、相手業者にとっての取引先変更の可能性、その他自社と取引することの必要性などを総合的に考慮していくとされます。
「正常な商慣習」とは公正な競争秩序の維持・促進の観点から是認されるべきものとされ、仮に現存そる商慣習に合致していても、直ちに正当化されるものではないとしています。
つまり取引上の優位性を背景に相手方に不利な行為を要請していれば、それが慣習上行われてきたものであっても違法となるということです。
課徴金の算定
優越的地位の濫用に対する課徴金は最長3年を限度として、違反行為が行われた期間における相手方との取引での売上額または購入額に1%を乗じたものとされます(20条の6)。
なおその算定額が100万円未満となる場合は納付命令は課されないこととなります。
また優越的地位の濫用に関しては公取委は課徴金の納付を「命じなければならない」としており、公取委の判断で課されるのではなく必ず課徴金納付命令が出されるという扱いになっております。
コメント
本件の審判手続でエディオンは国内有数の家電量販店であり事業規模も年々拡大していたこと、また127の納入業者もエディオンとの取引依存度が高いことなどから優越的地位が認められておりました。
エディオン店舗内での派遣された従業員の作業についても、自社製品の適切な展示による販促につながるといったものではなく、納入業者の利益になるものではないと認定されました。
一方でエディオンと納入業者間で締結された「機種・品番ごとにあらかじめ単価を決め難い割戻金」は独禁法施行令30条2項3号の算定から控除されるものに当たると認められ、課徴金額は30億円余りにまで減額されております。
以上のように優越的地位の濫用は課徴金が必ず課され、またその額も相当な額となるなど独禁法上厳しい扱いとなっております。
業界では相手業者の従業員にさせるのが常識となっていたとしても独禁法上は正当化されないと言えます。
今一度、取引相手の従業員を無償で使用していないか確認しておくことが重要と言えるでしょう。
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