NEC子会社の元社員が提訴へ、転勤拒否と解雇について
2019/06/25 労務法務, 労働法全般

はじめに
朝日新聞は24日、NEC系列子会社の元社員が転勤を拒否したこと理由とする懲戒解雇は不当であるとして近く提訴する方針である旨報じました。子育てに支障がでることが転勤拒否の理由とされます。今回は転勤拒否と懲戒解雇の可否について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、ITシステムを手がける「NECソリューションイノベータ」(東京)に勤務していた男性は2016年から大阪市内のグループ企業に出向していましたが、そこの閉鎖が決定し上司から川崎市への転勤か希望退職を選ぶよう求められていたとのことです。男性は大阪市内で母(75)と長男(11)の3人暮らしで長男は持病を持っており、また母も白内障を患っているとされます。男性は15年以上前にやっていたSEへの復帰やビル清掃会社への出向を提案されたが拒否すると川崎への転勤が発令され、それに対しても拒否したところ懲戒解雇となったものです。
転勤拒否と懲戒解雇
会社の社員が転勤命令を拒否した場合に懲戒解雇とすることは可能なのでしょうか。会社側は予め就業規則でどのような場合にどのような懲戒を行うかを定め周知しておけば懲戒権を行使することができるとされております。そして転勤命令も業務命令の一環といえる場合には、それを拒否した場合懲戒処分することも可能と言えます。ではどのような場合に懲戒解雇が無効となるのでしょうか。以下この点に関する有名な判例を見ていきます。
東亜ペイント事件
大阪に本店を置き、東京に支店、全国13ヶ所に営業所を置く塗料の製造販売を行う会社の神戸営業所で営業主任として働いていた男性が広島営業所への転勤命令を家庭の事情から転居を伴う転勤はできないと拒否、その後名古屋営業所への転勤命令も同様に拒否したところ懲戒解雇とされた事例です。最高裁は転勤命令も無制約に許されるものではなく、①業務上の必要性が無い場合、②転勤命令が他の不当な動機・目的でなされた場合、③通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるといった特段の事業がある場合は命令権の濫用として無効となるとしました(最判昭和61年7月14日)。
その他の注意点
懲戒解雇の有効性に関して、上記判例以外にも注意点があります。まず労働契約法16条では、解雇は客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められなければ権利濫用として無効となるとしています。また育児介護休業法26条でも転勤や配転命令の際には家族の養育・介護の状況を配慮しなければならないとしています。業務上転勤が必要な場合でも十分な話し合いや説得が必要と言えます。
コメント
本件で男性は出向先の大阪で郵便物の仕分け業務などを行っており、また持病を抱える子供と高齢の母と3人で暮らしているとされます。転勤を命じるに際して養育・介護の状況に配慮されたか、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益であったかが主な争点となると思われます。以上のように会社の転勤命令に関しては雇用形態や最初の雇用契約で勤務地を固定するなどの条項がない限り濫用とならない範囲で裁量が認められております。しかし近年、厚労省なども育休の取得を推進しているように家族の養育介護への配慮の要請も強まっております。社員に転勤を命じる必要が生じた場合には、当該社員にどの程度の負担を強いることとなるかを配慮した上で話し合い、解雇が避けられない事態となった場合でも選択肢の提示などを行いつつ真摯に説得していくことが重要と言えるでしょう。
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