青汁「大麦若葉」で提訴、商標権侵害の要件について
2019/05/29 知財・ライセンス, 商標法

はじめに
青汁商品「大麦若葉」を販売している製薬会社が類似商品を販売し商標権を侵害しているとして健康食品販売会社に販売差止を求め提訴していたことがわかりました。パッケージや商品が類似しているとのことです。今回は商標権侵害の要件を見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、製薬会社「山本漢方製薬」(愛知県小牧市)は大麦若葉を主原料にした青汁商品「大麦若葉」を2016年10月に商標登録し販売していたとされます。また健康食品販売会社「ユーワ」(東京都)も同様の粉末状の青汁商品を販売しており山本漢方側はパッケージの色やグラスに入った青汁の画像などが類似し、価格帯も同程度となっているとしてユーワを商標権侵害を理由に名古屋地裁に提訴しました。
商標権とは
商品または役務に対してロゴや商品名などを設定し特許庁で登録されますとそこに商標権が発生し、登録の日から10年間存続することになります(商標法19条)。商標権者は登録された商標を独占的排他的に使用でき、他者が許可無く使用した場合などには差止請求は賠償請求ができます(36条、38条)。商標権として保護される範囲は登録された商標とその対象とされる商品・役務、および類似の商標と類似の商品・役務となります。
商標権侵害とは
商標権侵害には①同一商標で同一商品・役務、②類似商標で同一商品・役務、③類似商標で類似商品・役務の3通りの類型があります。同じ商標を同じ商品に使用して販売する場合が典型例ですが、似通った商標を類似商品に使用する場合も同様となります。そしてこれらの行為はその包装紙やパッケージなどを準備することも予備行為として侵害となります(37条)。
商標権侵害の判断基準
同一の商品・役務で同一の商標を使用していればそれは商標権侵害となりますが、上記のように類似する場合も侵害となります。ではその類似性はどのように判断するのでしょうか。一般的には①外観、②呼称、③観念の3要素で判断すると言われております。観念とは一般的な印象のことを指します。これら3要素を一般的な需要者の感覚で出所混同の恐れを判断します。経産省のHPの紹介例では「製糖」と「日糖協 制糖茶」の外観が、「SCIENCE DIET」と「SUNACE DIET」の呼称が類似しているとされ、また「夢二」と「竹久夢二」の観念(イメージ)が類似していると判断されたとされております。
コメント
本件で問題となっている青汁は商品・役務が同一でパッケージも緑に大きく「大麦若葉」の表記があり、グラスにはいった青汁が表示されております。主な争点は外観の類似性となると考えられます。またユーワ側からは商標無効などの反論も考えられます。以上のように商標権は特許庁で登録されることによって初めて発生します。長年使用している商標であっても後続者によって先に登録されてしまえば商標権侵害で訴えられるといった事例も有りえます。また近年のネット利用の増加により潜在的な商標紛争も顕在化しやすいと言われております。どのような場合に商標権侵害となるかを把握し、自社製品に侵害が生じていないか、また自社が他社の商標権を侵害していないかを留意していくことが重要と言えるでしょう。
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