特許侵害に査証制度導入へ、特許法改正の動き
2019/03/22   知財・ライセンス, 特許法

はじめに

 特許法改正案が3月1日に閣議決定され、今期通常国会で審議がなされる予定となっております。特許侵害の疑いがある場合に中立的な専門家が立入検査を行う制度が導入される予定とのことです。今回は特許侵害紛争の際の証拠収集方法と改正案について見ていきます。

改正の経緯

 現在のグローバルなデジタルイノベーションにより業種間の垣根が崩れ、知的財産権のあり方も急速に変化しております。それに伴い特許侵害などの知的財産を巡る紛争も急変しておりグローバルな権利保障が求められております。そこでTPPの発効も見据え、特許侵害に対しては強力な証拠収集制度を導入することが検討されております。また特許侵害が認められた場合の損害賠償額の算定方法も見直す予定となっております。

特許権侵害について

 特許権は特許庁による登録によって発生し(特許法66条1項)、出願の日から起算して25年間存続します(67条1項)。この特許権が侵害された、あるいは侵害されるおそれがある場合には特許権者は差止請求をすることができます(100条1項)。また損害賠償の請求に際しては侵害者が特許侵害によって製造した物等の販売数量に侵害がなければ得られていた利益を乗じた額が損害額と推定されます(102条1項)。また罰則として10年以下の懲役、1000万円以下の罰金またはこれらの併科となり(196条)、両罰規定として法人にも3億円以下の罰金が科されることがあります。

特許権侵害の立証と証拠収集

 特許権侵害訴訟では原告側、すなわち特許権を侵害された側が侵害の事実を立証しなくてはなりません。そのためには特許権侵害の証拠等を特許権者が収集する必要があります。特許侵害された製品が出回っているならそれを証拠とすることも可能と言えますが製法特許などの場合、証拠は製造所や工場などに存在し証拠を得るのは困難となります。そこで民事訴訟法では提訴前証拠収集制度があります(132条の4)。これは提訴の予告をすることによって互いに文書送付嘱託や専門家の意見陳述、執行官による調査などを利用できます。しかしこれには相手の意見聴取が必要であり、また強制力もありません。他に証拠保全手続き(234条)もありますが、これも相手方が企業秘密を理由に拒否した場合は強制できないとされております。

改正案のポイント

 今回の改正案ではまず査証制度が導入されると言われております。これは特許権者の申し立てにより裁判所が中立な専門家を選任して侵害の疑いがある者の事業所や工場等に立入検査を行い、侵害の事実を調査して裁判所に報告するというものです。これにより、より実効的な証拠収集が行えます。そして損害の賠償額に関して、これまでは侵害者の販売額のうち、特許権者の生産能力を超える部分については賠償が否定されてきましたが、その部分についても侵害者にライセンスをしたとみなして賠償が命じられるようになるとされます。

コメント

 以上のようにこれまでの民事訴訟法上の証拠収集方法では実効的な立証が難しいとされてきました。証拠保全や文書提出命令で提出がなされても、実際に現場でどのように製造されているかなどの調査ができなければ立証が難しいことも多く、また上記のとおり強制力が無い場合もあり特許侵害訴訟は容易ではないと言われております。今回の法改正が実現すればこれらの問題も相当の部分で改善が期待できます。しかし一方で制度の濫用により逆に相手企業のプライバシーや企業秘密等が侵害される危険もあります。そのあたりの調整がどのように行われるのか、今後の審議を注視する必要があると言えます。このようにTPP発効に向けて国内の知財訴訟のあり方も変化が見えております。自社の知財保護にどのような制度が利用できるのか、また逆に自社がどのような検査を受けることがあり得るのか、正確に把握しておくことが重要と言えるでしょう。

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