デット・エクイティ・スワップによる財務改善手法について
2018/11/27   事業再生・倒産, 会社法

はじめに

 小型航空機MRJ(三菱リージョナルジェット)の開発で財務状況が悪化している三菱航空機に対し、現在親会社の三菱重工は2200億円規模の支援を行う方針です。今年9月の発表ではデット・エクイティ・スワップが行われるとのことでした。今回は財務改善の手法であるデット・エクイティ・スワップについて見ていきます。

事案の概要

 報道などによりますと、現在MRJの開発を進める三菱航空機では2018年3月期末の債務超過額が1100億円を超え、前期の2倍以上に膨れ上がったとのことです。同社は三菱重工が6割以上出資して親会社となっており、トヨタや三菱商事なども株主となっております。今年9月発表の再建案では新たに2000億円規模の増資を行い、そのうち1200億円を債権者でもある三菱重工への返済にあてるとされております。

デット・エクイティ・スワップとは

 デット・エクイティ・スワップ(Debt Equity Swap)とは会社が債権者に対し、債務の返済に替えて株式に転換することを言います。文字通りDebt(債務)をEquity(株式)にSwap(交換)することを意味し、会社の財務改善方法のひとつとされております。法的に見れば債権者は会社に対する債権をもって現物出資し、それに対し会社が株式を発行し割り当てるということになります。

会社法上の規制

 会社法上、募集株式発行に際して現物出資を行う場合、その旨とその出資財産の内容および価格を募集事項として決定する必要があり(199条1項3号)、原則として検査役による調査を要します(207条)。しかし207条9項5号によりますと、弁済期が到来している会社に対する債権で、出資としての価額が負債の帳簿価額を超えない場合には検査役の調査は不要とされております。つまりデット・エクイティ・スワップを行う場合には検査役の調査は不要ということです。なお債権者に割り当てる株式が、新たに定める優先株式等の種類株式である場合にはその旨定款変更が必要となります。

独占禁止法上の規制

 上記のようにデット・エクイティ・スワップは会社に対する債権を株式と交換し、債権者が株主に変わるというものです。独占禁止法では会社支配力の集中を防止するため、銀行と保険会社については他社の株式の保有規制が存在します。銀行は5%、保険会社は10%を超えて株式を保有することは原則として禁止されております(11条1項)。例外として合理的な経営改善のための計画終了後速やかに議決権を処分する場合は1年を限度として許容されます(同項6号)。また1年を超える場合は公正取引委員会の認可が必要となり、事業支配力が過度に集中することがなく、一定の取引分野における競争を実質的に制限することにならないと認めれる場合に認可されます(同2項)。

コメント

 以上のようにデット・エクイティ・スワップは会社に対する債権を株式に交換するというものです。これにより会社は貸借対照表上の負債が減少し、その分純資産が増加することになり、財務状況が改善することになります。債権者としても以後は株主として会社経営に参画し、会社経営が立ち直った際には配当や株式の売却益で債権を満足させることが期待できます。本件で三菱重工は一旦三菱航空機に金銭出資し、株式の割当を受けたあと、増資による資金を原資として返済を受けることとなり、純粋なデット・エクイティ・スワップとは少し異なるプロセスを踏むとされております。このように会社の負債を解消し、財務状況を改善する一つの方法としてデット・エクイティ・スワップは有効と言えます。会社法上の手続きや、独禁法上の規制に留意しつつ経営再建の手段として検討してみることが重要と言えるでしょう。

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