ゴーン氏逮捕、役員解任について
2018/11/20   総会対応, 金融商品取引法, 会社法, 刑事法

はじめに

 日産自動車の代表取締役会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が金商法違反容疑により逮捕されました。約50億円にのぼる過少記載があったとされ、西川社長は同容疑者を会長職から解任する方針であると説明しました。今回は取締役の解任について見ていきます。

事件の概要

 報道などによりますと、ゴーン容疑者はともに逮捕された代表取締役グレッグ・ケリー容疑者(62)は共謀し、2010年~2014年度の有価証券報告書に、実際には報酬額が約99億9800万円だったにもかかわらず、約49億8700万円と過小に記載していたとされます。同容疑者は日産の海外子会社に高級住宅などを購入させ提供させていた疑いがもたれており、東京地検特捜部はこれらが役員報酬に該当するかを調査しております。これを受け同社の西川社長は「重大な不正行為」として会長職を解任する方針であると説明しました。

役員の選任・解任

 取締役や会計参与、監査役などの役員および会計監査人は株主総会の決議によって選任します(会社法329条1項)。そして「いつでも、株主総会の決議によって解任」することができます(339条1項)。解任に際しては「正当な理由」がない場合には解任される役員等は損害の賠償請求ができます(同2項)。これは残りの任期の報酬相当分ということになります。なお監査役と累積投票制度で選任された取締役の解任については株主総会の特別決議が必要です(309条2項7号)。

解任の訴え

 役員が不正行為や法令定款違反を行なったにもかかわらず、株主総会で解任議案が否決された場合には株主は裁判所に解任の訴えを提起することができます(854条1項)。この場合の提訴要件は議決権の3%以上を保有していることとなります。公開会社の場合は6ヶ月以上保有していることが必要です(同項1号括弧書、2項)。また提訴期間として株主総会の日から30日以内に提訴することが必要です。被告となるのは役員当人と会社です(855条)。任期終了後、定員不足により権利義務役員(346条1項)となっている者に対し解任請求することはできません(最判平成20年2月26日)。これは法律による強制的な地位だからです。また通常、解任の訴えと同時に職務執行停止の仮処分申立もなされることが多いと言えます(民事保全法23条2項)。仮処分命令が出されると判決確定を待たずして職務執行権限が停止され、第三者との契約等もできなくなります。

欠格事由

 取締役は欠格事由として①法人、②被後見人・被保佐人、③会社法、金商法、民事再生法、会社更生法、破産法等違反により刑に処せられた者、④それ以外の法令違反で刑に処せられた者が挙げられております(331条)。取締役は実際に業務執行を行う必要があることから法人は不可となっており、後見・補佐開始決定がなされてもやはり不適格とされます。また③の罪の場合は執行終了後2年間欠格事由が継続します。破産については現行会社法では欠格事由から除外されましたが、民法上の委任の終了事由となりますので、一旦退任となります(民653条)。

コメント

 本件でゴーン氏は子会社に高級住宅などを購入させ、実際の役員報酬は約100億円であったところ、有価証券報告書には約50億円と記載していた疑いが持たれております。これは金融商品取引法の虚偽記載罪に当たる行為で、確定した場合は取締役の欠格事由に該当することになります。また代表取締役の地位は取締役会で解任され、取締役の地位も株主総会によって解任される可能性があると言えます。以上のように取締役等の役員は会社との関係は委任であることから、会社法上の欠格事由だけでなく、民法上の委任の終了事由にも注意する必要があります。また議決権の3%以上を保有する株主からの解任訴訟もありえます。役員の不祥事の際には損害賠償訴訟だけでなく解任請求などについても準備しておくことが重要と言えるでしょう。

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