テレワークという働き方と労務管理
2018/07/26 労務法務, 労働法全般

1.はじめに
総務省は、23日から27日の間を「テレワーク・デイズ」として、自宅やサテライト・オフィスなど職場外から働く「テレワーク」という働き方を広めるためのキャンペーンを始めました。働き方改革の一環として推進されているこのテレワークは、労働者のワークライフバランスを向上させ、企業にとっても生産性の向上や人材の確保に貢献するものとして注目されています。他方、企業としては労務管理の難しさやセキュリティに対する不安といった懸念も指摘されています。そこで、今回は「テレワーク」という働き方について解説した上で、企業に求められるテレワーク社員に対する労務管理のあり方を検討していきます。
2.テレワークとは
テレワークとは、ICT(情報通信技術)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を指します。つまり、自宅で働く在宅勤務や、職場外の施設を利用して業務を行うといった働き方です。特に企業に雇用される従業員が行うテレワークは、在宅勤務やモバイルワーク、施設利用型勤務といった種類があります。
テレワークには、従業員にとってワークライフバランスの実現や労働意欲の向上に資するメリットがあります。また企業にとっても、生産性の向上や、従業員の育児や介護による離職を防ぐといった利益があります。
他方、企業がテレワーク制度を導入するには就業規則等のルール整備が必要であり、特に適正な労務管理の難しさやセキュリティの問題がハードルとなっていることは既に指摘されているところです。
3.テレワーク社員に対する労務管理に求めるもの
テレワーク社員に対しても労働基準法等の労働関係法令は適用されます。この新しい働き方に対して、総務省は労働基準法遵守のため以下の事項に留意することを求めています。すなわち、①労働条件の明示、②労働時間の把握、③業績評価・人事管理等の取扱い、④通信費・情報通信機器等の費用負担、⑤社内教育の取扱いです。
企業にとって特に問題となるのは、②の労働時間管理にあると考えられます。企業としては、Eメールや電話、勤怠管理ツールを活用したり、勤務中、職場と常時通信可能な状態にするなどの方策をとる必要があるでしょう。
また、テレワークのうち在宅勤務の場合には、労働基準法38条の2の規定されている「事業場外のみなし労働時間制」を活用することも考えられます。これは、在宅勤務を行う従業員が就業規則等で定められた所定労働時間を勤務したとみなす制度です。この制度を利用することにより、従業員に対して育児や介護といった私用と仕事を両立する柔軟な働き方を認めたうえで、企業としては労働時間管理が容易となり、また残業代の算定等に支障が発生することも少なくなると考えられます。ただしこの場合、①当該業務が私生活を営む自宅で行われていること、②当該情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと、③当該業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないことという3つの条件を満たす必要があります。(「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドラインの訂正について」平成20年7月28日基発0728001号)
4.まとめ
「働く場所」「働く時間」にとらわれないテレワークという働き方は、従業員だけでなく企業にとっても、業務の効率化や事業コストの削減といったメリットをもたらす新しい働き方の選択肢だと考えられます。この新しい制度のメリットを享受するためには、就業のルールも同様に新しく策定していく必要があるでしょう。企業としては、上記にみた勤怠管理のみならず、人事評価基準の明確化や、従業員との合意形成などの適切な労務管理が求められると思います。
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