TPP関連法成立、著作権保護期間70年へ
2018/07/10 知財・ライセンス, 著作権法
はじめに
米国を除く11カ国が署名したTPPの関連法が先月29日に参院本会議で可決、成立しました。それにともない著作権の保護期間が50年から70年に改正される見通しとなりました。今回は著作権の存続期間について見ていきたいと思います。
法改正の背景
欧米諸国における著作権の保護期間は1990年台に多くの国で70年に延長されたとされております。それを受け日本でも70年に延長すべきとする声もあがっていた一方で慎重論も根強く、現在まで延長には至っておりません。そんななか環太平洋経済連携協定、いわゆるTPP交渉で米国は日本側に70年までの延長を要求しておりました。日本側はそれに応じTPP関連法案に保護期間延長が盛り込まれておりました。トランプ政権による米国のTPP離脱があったものの先日成立したTPP関連法では保護期間の延長はそのまま存続し、TPP協定発効時に70年となる見通しとなっております。
著作権とその発生
著作権法の保護対象となる著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」を言うとされます(2条1号)。そして著作者が著作物を創作した時点で著作権が発生することになります(51条1項)。登録申請し、登録されてはじめて発生する特許権や商標権とは異なる点といえます。
著作権の保護期間
著作権の保護期間は原則として著作者の死後50年を経過するまでとなります(51条2項)。正確には著作者が死亡した年の12月31日までとなります(57条)。共同著作物である場合は最後に死亡した著作者の死亡から起算されます(51条2項括弧書き)。無名、変名の著作物である場合はその著作物の公表から50年となります(52条)。法人、その他の団体名義の著作物も同様に公表から50年となっております(53条1項)。なお映画に関しては平成15年改正で公表から70年となっております(54条)。
保護期間適用に関する裁判例
映画に関する保護期間を70年に延長した平成15年改正を巡っては、同年に公表から50年を迎える映画について適用の有無が問題となったことがあります。この点について裁判所は、本件改正の施行が平成16年1月1日であることから、その時点で著作権が存続する映画について適用があるものとして平成15年12月31日をもって著作権が消滅した映画については適用を否定しました(東京地裁平成18年7月11日)。
コメント
TPP関連法の効力が発効した場合、その時点で著作権が存続しているものについては存続期間が70年に延長されることとなると考えられます。昔の映像作品などをCMや広告の動画などに使用しようと考えていた場合はその点に注意が必要となってきます。一方で古い著作物の権利を保有している場合は権利行使期間が延長されることとなります。また関連法では保護期間延長の他にも著作権侵害の一部が非親告罪化することや、著作権管理のためのプロテクトなどを技術的に回避する行為も原則著作権侵害となる旨の改正も盛り込まれております。著作権が発生するコンテンツの利用に関してはこれらの改正点も踏まえて今一度整理し、周知することが重要と言えるでしょう。
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