違法残業監視が強化、三六協定って何?
2018/07/10   労務法務, 労働法全般

1 はじめに

 7月から厚生労働省により働き方改革の一環として残業に関する企業の監督体制を強化する動きがあります。
 そこで、本稿では「三六協定」とはそもそも何を指すのか、また今後「三六協定」を締結していない企業としてどのように対応していくべきかについて解説していきます。

2 「三六協定」とは?

(1)「三六協定」の中身
 「三六協定」とは、労働基準法(以下、「労基法」とします。)36条1項に定められている労使協定のことを言います。
 具体的には➀時間外又は休日の労働をさせる必要のある具体的事由、➁業務の種類、➂労働者の数、➃1日及び1日を超える一定の期間についての延長時間の限度(休日労働の場合は労働させることができる休日)について、労使間で協定を(労働基準法施行規則16条1項 )し、かつ行政官庁に届け出る必要がある(同規則17条1項)とされています(水町勇一郎『労働法』[第4版]282頁参照。以下、『水町・労働法』と表記します。)。

(2)「三六協定」の効果
 労基法36条1項によれば、使用者は、過半数の労働組合か労働者の過半数を代表する者との間で書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、週40時間・1日8時間の法定時間を延長し、又は休日に労働させることができます。
 ただし、当該協定で労働時間の延長を定めるにあたっては、当該協定の内容が同条2項の定める基準( 労働基準法36条1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準 平成10.12.28労働省告示154号、最終改正:平成 21.5.29厚生労働省告示316号)に適合したものとなるようにしなければならないとされています(同条3項)。この基準に適合していない場合には、行政官庁によって助言・指導等が行われる可能性があります(同条4項)。

3 「三六協定」だけでは不十分!?

(1)労働契約上時間外・休日労働を行う義務の設定
 使用者が労働者に具体的に時間外・休日労働を命じるためには労基法上の要件を満たすことに加えて、労働契約上時間外・休日労働を行う義務の設定が要求されます。労基法上の要件の一つに36協定の締結・届出などがあります(『水町・労働法』284頁)。そのため、三六協定を締結するだけでは足りない可能性があります。
 ここで労働契約上時間外・休日労働を行う義務の設定について、学説上、労働者の個別の同意が必要とする個別的同意説や、就業規則等の包括的規定で足りるとする包括的同意説が対立しています。
(2)日立製作所武蔵工場事件判決(最判平成3・11・28民集45・8・1270)
 労働契約上時間外・休日労働を行う義務の設定について日立製作所武蔵工場事件判決が判示しました。
 すなわち、「使用者が当該事業場に適用される就業規則に当該三六協定の範囲内で一定の業務上の事由があれば労働契約に定める労働時間を延長して労働者を労働させることができる旨定めているときは、当該就業規則の規定の内容が合理的なものである限り、それが具体的労働契約の内容をなすから、右就業規則の規定の適用を受ける労働者は、その定めるところに従い、労働契約に定める労働時間を超えて労働をする義務を負うものと解するを相当とする」と判示し、包括的同意説の立場を採ったとされています。
(3)トーコロ事件(東京高判平9・11・17:最2小判平13・6・22)
トーコロ事件では、電算写植機オペレーターが眼精疲労の状態にあり医師から時間外労働を控えるよう診断されていることは時間外労働命令を拒否することのできるやむをえない理由にあたる趣旨の判示をしています。上記最高裁における 労働契約上時間外・休日労働を行う義務が認められる場合は、例外的にその義務が認められることになるため、通常の場合以上に 労働契約上時間外・休日労働を拒絶し得るやむを得ない理由がないかという点を確認する必要があると見受けられます(『労働法』[第5版]浅倉むつ子他239頁)。

4 コメント

 厚生労働省における平成25年の調査(下記資料参照)によれば、「三六協定」を締結している事業所が全体の55.2%で、約45%もの事業所が「三六協定」を締結していないことになります。
 ここで、「三六協定」を締結していない企業のうち43.0%もの事業所が「時間外労働・休日労働がない」としています。
 しかし、例えば「時間外労働・休日労働がない」と回答する事業所も現実にはサービス残業や持ち帰って業務を行わせてしまっているケースも考えられないでしょうか。このようなケースの場合、上司・部下の間で時間外労働等を行われてしまい人事側でも把握しきれないことが考えられます。
 そのため、冒頭の働き方改革における監督の厳格化の方針をも踏まえると、現在「三六協定」を締結されていない企業においては、社内における残業の実態を把握するように努め、その結果を踏まえた上で三六協定の締結もご検討されてみてはいかがでしょうか。

参考:
第104回労働政策審議会労働条件分科会資料

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