消費者契約法改正の動きについて
2018/03/06 契約法務, 消費者契約法, 法改正

はじめに
政府は2日、民法改正による成人年齢引き下げを踏まえ「デート商法」などの契約を取り消すことができるようになる消費者契約法の改正案を閣議決定しました。10代の成人を悪質商法から保護することを主な目的としています。今回は消費者契約法改正のポイントについて見ていきます。
法改正の経緯
2022年施行が予定されている改正民法では現在の20歳から18歳に成人年齢が引き下げられることになっております。それを踏まえて未成年者喫煙禁止法や旅券法、少年法、国籍法などの各法律の年齢規定も改正されます。そして消費者契約法改正では10代で成人となる若者の保護を図ります。報道などによりますと、近年、業者であることを隠し恋愛感情につけ込んで商品の販売を勧誘する、いわゆる「デート商法」の相談が年に500件前後国民生活センターに寄せられていると言われております。そのうちの半数は20代の若い世代が占めているとされます。そのような10代の成人を悪質商法などのトラブルから保護すること必要とされてきました。
法改正のポイント
(1)取り消しうる不当な勧誘行為の追加
今回の改正の一番のポイントとして取り消すことができる契約類型が追加されました。まず現行法4条3項に規定されている、不退去や消費者の退去妨害による困惑に乗じた意思表示の取り消しに加え、①社会生活上の経験不足につけ込んだ契約や、②契約締結前に債務の実施を行うものが追加されます。①は就職や結婚といった社会生活上の願望に関し不安をあおり、就職セミナーなどに勧誘したり、また消費者の恋愛感情を知りつつ、契約しなければ関係を継続できないなどと勧誘する行為です。②は消費者が契約締結の意思を表示する前に目的物の準備提供を行ない代金請求する行為です。典型的には先に物干し用の竿竹を切るといった行為です。さらに現行法4条2項の不利益事実の不告知から来る事実誤認による契約で、「故意に告げなかった」場合に限定されていた取り消しを「故意又は重大な過失によって」と拡大されます。
(2)無効となる不当契約条項の追加
現行法8条では事業者の債務不履行や不法行為、目的物の隠れた瑕疵などによる消費者への賠償責任を免除する契約条項などが無効と規定されております。また8条の2では消費者の解除権を放棄する旨の条項も無効とされております。そこに消費者の後見、補佐、補助開始决定を理由とする解除条項、例えば「賃借人が成年被後見人となった場合、賃貸人は直ちに契約を解除できる」といった条項が追加されます。また事業者が自己の責任を自ら决定する条項も無効となります。「当社が過失のあることを認めた場合に限り、当社は賠償責任を負う」といったものです。
(3)事業者の努力義務
現行法3条で定められている事業者の努力義務がより具体的になります。事業者が契約条項を定めるにつき、その解釈に疑義が生じない明確なもので、消費者にとって平易なものとなるよう務めなければなりません。また契約の目的物に関して個々の消費者の知識、経験を考慮して必要な情報を提供するよう勤めなければならないとされます。
コメント
現行民法では20歳で成年とされ(4条)、未成年の法律行為は法定代理人の同意がなければ取り消すことができるとされております(5条1項、2項)。民法改正により18歳で成年となると、18歳、19歳の社会的に未成熟な若者の保護がなくなることになります。今回の法改正案はまさにその部分を補う形となっております。また不利益事実の不告知についても、これまでは従業員の過失によって告知していなかったと言えば取り消しはできなかったところを取り消すことができるようになっている点がポイントです。しかし逆に消費者側が説明を拒んでいたといった場合には取り消すことができる不告知には該当しません。無効、取り消しうるものがより具体的になる改正消費者契約法。どのような場合は違法で、どのような場合は適法かを正確に把握し、顧客との契約書条項も今一度見直すことが重要と言えるでしょう。
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