パチンコ景品買取で経営者を逮捕、風営法による規制について
2017/09/22 コンプライアンス
はじめに
福岡県警は5日、いったん客に提供した景品を再び買い取ったとして福岡県内のパチンコ店経営者を風営法違反の容疑で逮捕していたことがわかりました。風営法ではパチンコやスロットといった遊戯で客に金銭等の提供をすることを禁止しております。今回は風営法による規制について見ていきます。
事件の概要
西日本新聞の報道などによりますと、福岡県内でパチンコ店を運営する会社の代表取締役である男(59)は、パチンコ店舗を統括管理する立場でありながら、いったん客が店内で獲得したメダルと引き換えに提供した「特殊景品」5枚を同店舗敷地内に設置した「賞品買取所」で1800円で買い取ったとされております。福岡県警生活保安課は風営法違反(自家買い禁止)の容疑で同男を逮捕したとのことです。
法令による規制
刑法185条によりますと、賭博をした者は50万円以下の罰金または科料に処するとしています。また賭博場を開帳した場合は3ヶ月以上5年以下の懲役となります(186条2項)。競馬や競輪、競艇といったものは競馬法や自転車競技法といった法律により特別に認められている公営ギャンブルとなります。パチンコ・スロット店は風営法上「射幸心をそそるおそれのある遊戯」をさせる営業に該当することになります(2条1項4号、5号)。そしてこれらの営業では「現金又は有価証券を賞品として提供すること」「客に提供した賞品を買い取ること」「遊戯の用に供する玉、メダルその他これらに類する物を客に営業所外に持ち出させること」などが禁止されております(23条1項各号、2項、3項)。
パチンコ店に関する問題点
上記のとおり日本においては法で特別に認められた公営ギャンブル以外でのギャンブル運営は禁止されております。パチンコ店も例外ではなく、上のような規制がされており遊戯の結果に応じて客に金銭を提供したり、提供した景品を買い取ることを禁止されております。そこで現状は①パチンコ店②景品交換所③景品問屋と3つの独立した業者を介することで客は事実上パチンコの出玉を金銭に変えることができるようになっております。いわゆる三店方式と呼ばれるものでパチンコ店は客に「特殊景品」と呼ばれる景品を提供するだけで、客はそれをまた別の業者であり一種の古物商に該当する景品交換所に持ち込み買い取ってもらいます。そして景品問屋がまたそれを買取りパチンコ店に卸すという仕組みです。パチンコ店は上のとおりいわゆる自家買いが禁止されていることから(23条1項2号)これらの店舗はそれぞれが人的にも資本的にも独立した別法人となっており、古物商として公安委員会に営業許可を受けております。この三店方式の適法性については従来から議論がなされてきましたが、この点について正面から言及した判例は今のところ存在しません。これら三店は実質一体であり一連の行為であるから違法との説もあります。
コメント
本件で逮捕された経営者はパチンコ店の店舗敷地内に設置した景品買取所で客に提供した景品を自社の従業員を使って買い取らせていました。三店方式によることなく自ら景品を買い取っていたということです。景品交換所は客の利便性からパチンコ店に近い場所に設置されていることが多いと言えますが、あくまでパチンコ店とは無関係の別業者です。現在の風営法等の解釈上は三店方式を厳格に貫く限りは直ちに違法であるとは言えないとする、いわゆるグレーゾーンのような扱いとなっていると言えます。それ故に警察もこの方式に従う限りは摘発しないという運用を取っているものと思われます。今回はその扱いを軽視し面倒な方式を行わずに自ら買取所を開設した点に警察も厳しい態度で臨んだものと言えます。三店方式は証券取引所も法的に曖昧であることから上場を認めなかった例も存在し、今後当局の通達や法改正の手が入ることもあり得るところです。パチンコやスロット等の風俗営業を行う際には法令やその解釈と現在の運用状況を正確に把握し、厳格に方式を守ることが重要と言えるでしょう。
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