ワークライフバランスの実現に向けて
2017/08/17 労務法務, 労働法全般

厚生労働省が労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度について初めて公表しました。実地義務対象事業場のうち、82.9%の事業場がストレスチェック制度を実施、労働者のうち、ストレスチェックを受けた労働者の割合は78.0%。医師による面接指導を実施した事業場の割合は32.7%でした。
1.ワークライフバランスとは
労働契約法第3条第3項によって「労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。」と規定されます。具体的には、使用者は労働者の介護や育児等私生活上の事情によって生じる必要性に配慮し、労働者の仕事と私生活の充実を図るものです。
2.ストレスチェック制度とは
職場におけるメンタルヘルス不調を未然に防止することを目的に、常時50人以上の労働者を使用する事業場に対し、平成27年12月から年1回のストレスチェックとその結果に基づく面接指導などの実施を義務付けているものです。
3.今回の実施に浮かぶ現状と問題点
今回の発表では平成29年6月末時点で、82.9%の事業場がストレスチェック制度を実施済みになり、その内チェックを受けた労働者は78%と高い数値といえます。しかしながら、事業所及び労働者の全てがチェックされたものではなく、また、医師による面接指導を実施した事業場の割合は32.7%に留まります。専門的知見を有する医師によるストレスチェックが過半数にも満たないこと、業務の多忙な労働者ほどストレス負荷が高いと予想されるにもかかわらず、業務の多忙を理由にストレスチェックがかえって受けられない懸念があることなど、ストレスチェック制度はまだまだ改善すべき問題が山積された状況にあります。
4.最後に
平成29年8月現在において、ストレスチェックの実施は努力義務に留まるものであり、違反について具体的な罰則や公表、勧告といった行政処分はありません。しかしながら、ストレスチェックの不実施の事実は、労働災害や過労死における労働者及びご遺族から企業への損害賠償請求事例において、企業が労働者への安全配慮に欠けていたという企業の安全配慮義務違反の具体的事実として、不利益に評価されることも十分考えられます。
又、少子高齢化に伴い、2015年度の労働力人口は7,682万人から2035年では労働力人口は6,343万人まで大幅に減少するため、労働者の確保は企業にとって、これまで以上に優先度の高いタスクとなることは予想できます。
このような社会状況のなかで、企業においては労働者の確保とともにワークライフバランスという労働者の私生活に対する配慮を行なう必要性が今後高まると予想されます。そのため、社内整備の見直し等、企業はコンプライアンスの対応に注意が必要となります。
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