大阪簡裁が「串かつだるま」に罰金刑、不法就労助長罪とは
2017/07/28   労務法務, 労働法全般, その他

はじめに

人気串かつ店で外国人留学生を法定上限を超えて労働させたとして大阪簡裁に起訴されていた事件で26日、求刑通り罰金50万円の有罪判決が言い渡されました。入管難民法に違反する不法就労。そして不法就労者を使用する場合の不法就労助長罪について見ていきます。

事件の概要

報道などによりますと、串かつ店「串かつだるま」では2016年月から同年11月にかけて大阪市中央区の店舗でベトナム、ネパール、ミャンマー国籍の留学生ら17人を週28時間を超えて働かせていたとされております。大阪市天王寺区の路上で大阪府警の警察官がベトナム籍の男性(31)に職務質問をしたところ、同店の給与明細を持っていたことから発覚したとのこと。これにより入管難民法違反の容疑で同店運営会社の「一門会」(大阪市)の社長と同社店舗統括部長の藪口征平被告(38)らが逮捕送検されておりました。

外国人の不法就労とは

不法就労とは日本に滞在する外国人で、日本に在留または労働する許可等を受けずに、あるいはその範囲を超えて就労することを言います。不法就労には不法滞在となっている場合、就労許可等が得られていない場合、許可の範囲を逸脱している場合と大きく分けて3つの類型にわけられます。以下具体的に見ていきます。

(1)不法滞在となっている場合
外国人が通常、観光目的で日本に滞在する場合は「短期滞在」に該当し、15日以内であればパスポートのみで滞在することが可能です(入管法施行規則 別表3)。それを超え90日までの滞在であれば短期滞在査証、いわゆるビザが必要となる場合があります。それを超えて長期滞在する場合には在留資格を得る必要があります。在留資格は公用、芸術、報道、経営、医療、教育、留学など全部で27種類あり(入管難民法別表1)それぞれに滞在期間やできることが細かくさだめられております。その中で「永住者」については無期限となっておりますが、それ以外の場合は期間が定められており、それを超えた場合は不法滞在となります。そして不法滞在中の就労は不法就労となります。

(2)就労許可が得られていない場合
外国人が上記在留資格を得た場合、その資格の内容として認められた労働を行うことができます。27の在留資格の中で就労が認められているのは、公用、外交、芸術、宗教、報道、教授、医療、研究、人文知識国際業務、技能、興行など17種です。通訳や語学講師は人文知識国際業務に当たります。それ以外の文化活動、留学、就学、研修などは原則就労できません。例外的に入国管理局で資格外活動許可を得た場合にはアルバイト等が可能となります。「留学」「就学」に関しては就労時間制限があり、留学の場合1週間に28時間、聴講生は1週間に14時間、就学の場合は1日4時間となっております(入管法施行規則19条5項1号)。なお90日以内のビザによる短期滞在の場合は原則就労することができず、公演や講義といった臨時の報酬を得るものに関しては例外的に認められます。

(3)許可範囲を逸脱した場合
上記の就労が可能な在留資格を得ている場合であっても、許可の範囲を超えたり、逸脱した場合には不法就労となります。たとえば「技能」の在留資格を得、システムエンジニアとして雇用されていた場合、英語ができることから同時に通訳としても業務を行えば許可範囲の逸脱となります。また就労時間制限がある場合にそれを超えて労働を行うことも許可範囲を超えたことになります。

不法就労助長罪

上記のような不法就労者を雇用していた場合、事業者は不法就労助長罪に問われることがあります(73条の2)。「事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者」(同1項1号)、「外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者」(同2号)、「業として外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあっせんした者」(同3号)は3年以下の懲役、300万円以下の罰金またはこれらの併科となります。なお不法就労であることにつき善意でありかつ過失がないときは処罰を免れることになります(過失犯 同2項)。

コメント

本件で「串かつだるま」で就労していたのはベトナム、ネパール等から来た留学生であり、当然在留資格も「留学」に該当します。留学の場合には1週間に28時間の時間上限があり、同店はそれを超えて労働をさせていたとされます。大阪簡裁の井野口裁判官は「違法状態を知りながら、改善せずに利益を優先させた」として運営会社に罰金50万円、藪口被告に罰金30万円を言い渡しました。上記のとおり入管難民法上、外国人が就労するための許可や要件はかなり厳格です。しかし一般的に日本に滞在する外国人はそれらの許可範囲に対しあまり注意を払っていない場合が多いと言われております。雇用している外国人の在留期間が気づかない内に過ぎていた、業務内容が許可範囲外であったといった事例も多いとされます。外国人の就労資格に関しては「在留カード」表面の「就労制限の有無」欄や裏面の「資格外活動許可欄」で確認することができます。また在留期間についてもそれによって確認することができます。外国人従業員を雇用する場合にはこの点十分に確認し、不法就労であった場合に「過失」有りとされないよう十分に注意することが重要と言えるでしょう。

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