東電が900億円調達へ、社債について
2017/03/07 商事法務, 会社法, その他

はじめに
日経新聞電子版は4日、東電が6年半ぶりに社債を発行する決定をした旨報じました。これにより東電は市場から900億円に上る資金を調達することになります。企業の資金調達方法の一つである社債。今回は社債の発行手続について見ていきます。
社債とは
社債とは会社が行う割当によって発生する、会社に対する金銭債権を言います(会社法2条23号)。株式の発行と同様に広く一般から長期的かつ多額の資金を集めることを目的としていますが、株式とは違って会社の経営や支配関係に影響を及ぼすことがありません。社債の種類としては①普通社債②劣後債③永久債④新株予約権付社債等が挙げられます。社債はあくまで会社に対する債権であることから、償還期限が到来したら償還する必要があります。また会社の業績にかかわらず利息を支払う必要があります(676条3号)。株式の場合は原則として出資金を払い戻す必要はなく、分配可能額が無ければ剰余金の配当は不要です(453条、461条)。
社債の発行手続
社債を発行する場合はまず募集事項の決定を行います。一定の場合には株主総会での決議が要求される株式の発行と違い、社債の場合は取締役、取締役会で決定することになります(348条1項、362条4項5号)。決定すべき募集事項は①募集社債の総額②各社債の金額③利率④償還の方法と期限⑤利息の支払方法と期限⑥社債券を発行する場合はその旨⑦記名式、無記名式の転換について⑧社債管理者の訴訟行為について⑨払込金額⑩払込期日等が挙げられます。そして社債の引受申し込みをしようとする者に対し以上の決定事項を通知することになります(677条1項)。それを受け、申込みをする者は氏名・住所、引き受ける社債の数と金額等を記載した書面を会社に提出することになります(同2項)。会社は申込者の中から割当を受ける者を決定します(678条1項)。
社債原簿
会社は社債を発行した日以後、遅滞なく社債原簿を作成し上記決定事項、社債権者、払い込まれた金額と払込日、社債券番号等を記載することが義務付けられます。社債原簿は株主名簿のように社債に関する事項を明らかにするための帳簿です。本店に備え置くことが義務付けられ、社債権者は営業時間内はいつでも閲覧することができます(684条1項2項)。また社債を譲渡する場合には取得者を社債原簿に記載しなければ会社、第三者に対抗することができません(688条1項)。なお社債原簿は社債原簿管理人に管理を委託することができます(683条)
社債管理者
会社が社債を発行する場合、原則として社債管理者に管理を委託しなければなりません(702条)。社債管理者は銀行か信託会社等でなくてはなりません(703条)。一般的にはその会社の取引銀行に委託することになります。社債管理者は善管注意義務をもって社債権者のために社債を管理することになります(704条)。一般大衆である社債権者の利益を保護し法律関係を簡明にすることが目的です。発行会社が債務不履行に陥った場合には社債管理者が社債権者に賠償することになります(710条)。なお各社債の額が1億円を超える場合は管理委託が不要です。この場合社債権者は機関投資家等のプロであり保護の必要性が低いからです。また社債権者が50人未満の場合も不要となります(会社法施行規則169条)。
コメント
上記のように社債は株式と違い持株比率に影響を及ぼさず、得られた資金の使途も自由です。株式の場合は出資金の最低半分は資本金に計上しなくてはならず、残りは資本準備金に回さなければならないといった制限があります。東電も今回の社債発行で調達した資金は既に発行されている社債の償還に充てることになっております。このように資金が必要であるが株式は発行したくなく、また金融機関からの融資も受けられない場合には社債の発行を行うことも選択肢の一つとなります。中小企業やベンチャー企業等でこれから業績が上がる見込みがある場合には新株予約権付社債を発行し、株価が上がれば株式に転換するという選択肢を付与することで投資家にアピールすることもできます。また信用保証協会による保証をつけて金融機関に社債を引き受けてもらう方法も存在します。その時々の会社の現状や投資家のニーズに合わせて、資金調達に社債の活用も積極的に検討することが重要と言えるでしょう。
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