JASRACが音楽教室等についても著作権使用料を徴収する方針を表明
2017/03/07   知財・ライセンス, 著作権法

1 事案の概要

 日本音楽著作権協会(JASRAC)が、ピアノやギターなどを教える音楽教室から楽器演奏に伴う著作権の使用料を徴収する方針を表明したことに対して教室を運営する企業や団体が「音楽教育を守る会」を立ち上げて、「演奏権は教室での演奏には及ばない」と反論しています。
音楽教育を守る会
JASRAC

2 演奏権

(1)概要
 演奏権は著作財産権に属する権利であって、演劇や音楽演奏を不特定多数の公衆の前で公開する為に必要な権利を指します。
 著作権法第22条により他人の著作物を公衆で上演や演奏などをするとき、著作者の許諾が必要となります。
著作権法 第22条
 著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。
著作権法(条文)

(2)「公衆」とは
「公衆」とは、「不特定の人」又は「特定多数の人」を意味します。
 また、相手が「一人の人」であっても、「誰でも対象となる」ような場合は、「不特定の人」に当たりますので、「公衆」にあたります。例えば、一人用の部屋で演奏している場合、「1回に入れるのは1人だが、順番を待って100円払えば誰でも入れる」というときは「公衆向けに演奏した」ことになります。
著作権なるほど質問箱(文化庁)

3 事案の詳細

(1)JASRAC側
 2017年2月2日、国内外の楽曲約350万曲の著作権を管理するJASRACは、音楽教室で先生が演奏する際、生徒が「公衆」に当たるとして著作権上の演奏権が及ぶとの見解を表明しました。2017年7月に文化庁に使用料規定を提出し、2018年1月から徴収を始めたい意向を示しました。
JASRACの発表
 JASRACの浅石道夫理事長(65)は「非営利・入場無料・無報酬の場合は徴収しないが、音楽教室は生徒から受講料を取っている営利行為である。また、メーカーにとって音楽教室は楽器を売るためのビジネスモデルになっている」として、徴収対象とする理由を説明しています。
 また、楽器教室での演奏は「公に」に当たらないので演奏権は及ばないのではないかという質問に対してJASRACは以下のように回答しました。
 「楽器教室において音楽著作物を演奏する主体は、著作権法上の規律の観点から、当該楽器教室の経営者です。そして、楽器教室における音楽著作物の利用は不特定の顧客(受講者)に対するものですから、公の演奏にあたります。各種教室事業のうちダンス教室における音楽著作物の演奏利用は公衆(不特定かつ多数)に対するものとの判断が既に示されています(名古屋高判平16・3・4判時1870号123頁)。」
社交ダンス教室に対する控訴審判決

(2)音楽教育を守る会側
 こうしたJASRACの動きに対し、音楽教室を運営するヤマハ音楽振興会、河合楽器製作所など業界大手と、ピアノ教師らでつくる全日本ピアノ指導者協会など7企業・団体は「音楽教育を守る会」を結成しました。
 2月2日(木)に1回目の会合を開き、「演奏権が及ぶのは公衆に聞かせるための演奏であり、音楽教室での練習や指導のための演奏は該当しない。文化の発展に寄与するという著作権法の目的にも合致しない。今後は本会を通じて対応していく」との活動方針を決定したとのことです。
「音楽教育を守る会」 発足のお知らせ

4 判例(社交ダンス教室事件 名古屋高判平16・3・4)

 この判例は、社交ダンス教室が社交ダンスを教えるに際して流している音楽は、音楽著作物の権利者に無断で演奏しているとして、演奏の禁止、損害賠償の支払い等を求めた事件です。
裁判所は著作権法第22条の「公衆」について以下のように判断しました。
 「一般に、「公衆」とは、不特定の社会一般の人々の意味に用いられるが、法は、同法における「公衆」には、「特定かつ多数の者」が含まれる旨特に規定している(同法2条5項)。法がこのような形で公衆概念の内容を明らかにし,著作物の演奏権の及ぶ範囲を規律するのは、著作物が不特定一般の者のために用いられる場合はもちろんのこと、多数の者のために用いられる場合にも、著作物の利用価値が大きいことを意味するから、それに見合った対価を権利者に環流させる方策を採るべきとの判断によるものと考えられる。かかる法の趣旨に照らすならば、著作物の公衆に対する使用行為に当たるか否かは、著作物の種類・性質や利用態様を前提として、著作権者の権利を及ぼすことが社会通念上適切か否かという観点をも勘案して判断するのが相当である(このような判断の結果、著作権者の権利を及ぼすべきでないとされた場合に、当該使用行為は「特定かつ少数の者」に対するものであると評価されることになる。)。」
著作権の侵害性-演奏権侵害の判断基準
著作権法に関する判例紹介

5 著作権(演奏権)侵害があった場合

(1)民事上の請求
 著作権侵害があった場合には、著作権者は侵害をした者に対し侵害行為の差止請求(著作権法第112条)、損害賠償の請求(民法第709条、著作権法第114条)、不当利得の返還請求(民法第703条、第704条)、名誉回復などの措置の請求(著作権法115条、116条)が出来ます。
(2)罰則
 著作権を侵害した場合には侵害者は、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金、またはその両方を科されます(著作権法119条)。
 また、法人の代表者や従業員等が著作権侵害行為を行った場合には、本人と当該法人にも3億円以下の罰金が科されます(著作権法124条)。

6 コメント

 著作権(演奏権)侵害は損害賠償だけでなく、最長10年の懲役及び3億円以下の罰金等の刑事罰を受ける可能性があります。他人の著作物を無断で使用する場合はかなりデメリットがあるので、他人の著作物を使用する側はその点について気をつける必要があります。
 また、著作権者から明示的に許可をもらっていない場合には、本件のように突然著作権使用料を徴収する場合もあり得ますのでその点も注意する必要があります。

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