特許庁、親子会社で商標共有化への動き
2017/02/08   知財・ライセンス, 商標法

はじめに

経産省の産業構造審議会では親会社が登録している商標を子会社も取得できるようにするため商標の審査基準を改定する方向で検討していることがわかりました。今年4月から施行が予定されております。今回は商標審査基準の改定案について見ていきます。

商標権とは

商標とは「文字、図形、記号、立体的形状」等、業として商品を生産し、役務を提供する者がその商品や役務に使用するものを言います(商標法2条1項)。商標は特許庁に登録することによって商標権として独占的に使用する権利が発生します(18条)。商標権の存続期間は登録の日から10年で更新することができます(19条1項、2項)。出願できる商標は「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」でなければなりません(3条柱書)。つまり他人の商品やそれと誤認するような商標、すでに他人が登録している商標と紛らわしい商標等は不可となります。その他にも公序良俗に反するものや他人の肖像権を侵害するもの、国旗等も登録できません。

審査基準改定案

日経新聞電子版によりますと、審議会のワーキンググループで現在審議されているのはまず親子会社等のグループ関係であれば、親会社の同意書を付けることによって同じ商標を登録できる点、そして登録されている商標の指定商品を追加登録できるようにするという点です。以下具体的に見ていきます。

(1)商標の共有化
商標登録出願は上記のとおり「自己の業務に係る」ものでなくてはなりません。「他人の登録商標又はこれに類似する商標」は登録することができないとされております(4条1項11号)。この点について審議会の資料によりますと出願人と引用商標権者が一方が相手を支配下に置いているという関係があり、相手方が登録について同意している旨を証明したときは4条1項11号に該当しないものとするとしています。そして支配関係にある場合の例として議決権の過半数を有する場合、資本提携の関係等事実上支配下に置いている場合等が挙げられております。つまり親子会社等のグループ企業間では、商標権者の同意があれば同じ又は類似の商標を取得することができることになります。

(2)指定商品・役務の追加
日経新聞の報道によりますと1つの商品に対する商標を出願した後で対象の商品を追加したい場合、1つ目と追加したものをまとめて申請できるようにするとしています。商標登録には商標と指定商品・指定役務が記載されることになりますが現行制度上、登録後に指定商品・役務を追加することはできません。これは商標に関しては先願主義を採っていることと関係します。商標は先に出願した者が原則権利を取得します。しかし先に出願した者の権利の範囲が後で拡張されると、他の者の商標権や出願に影響を及ぼすからです。この場合は新規に出願し古い方を放棄するといった方法を取らなくてはなりません。また補正訂正する場合でも(68条の2)、補正できる範囲は「要旨を変更」しない限度で認められます(16条の2)。これも同様の趣旨からです。改正案ではこの追加変更がある程度可能になるものと考えられます。

コメント

従来は親子会社やグループ企業内であっても、他の企業が登録している同じ商標や類似の商標を登録出願することはできませんでした。例えば親会社が「タナカ」という商標を取得しており、子会社が「タナカテック」という商標で事業を行いたくても、両者は類似することから出願ができないのが実情でした。この場合は商標権者である親会社が商標権を許諾または譲渡するしかありませんでした。今回の改正案が施行された場合親会社の同意書を添付することによって子会社が独自に商標を取得できることになり親会社とは違った独自性を持たせることも可能となります。また業務拡大によって指定商品や役務の拡大が必要となった場合、これまで不可能だった追加変更が可能となる可能性が出てきました。これにより出願のし直しや更新放棄といった方法と取らずに簡易迅速に商標範囲を拡大できます。グループ内での事業拡大の際には商標の共有、範囲の拡大を積極的に活用を検討してみることが重要と言えるでしょう。

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