平戸の「旗松亭」再生計画案提出 再生計画案とは
2017/01/25 事業再生・倒産, 倒産法, その他

1 はじめに
取引先が民事再生手続を受け、民事再生計画が提出された場合に企業法務担当者は債権者としてどのようなアクションを採るべきかについて、天皇・皇后両陛下が利用されるなどして有名になった長崎県平戸市にあるホテルが民事再生計画案を提出したニュースを下に説明していきたいと思います。
2 事案の概要
2016年1月29日、平戸温泉国際観光ホテル「旗松亭」(長崎県平戸市)は、負債額約22億円を抱えて、民事再生法の適用申請をしました。その後、2017年1月24日に、中国人実業家に経営権を譲渡する内容の再生計画案を長崎地裁佐世保支部に提出したと発表しました。再生計画案によると、中国人実業家が旗松亭の全株式を取得することで、出資・貸付金として計2億1600万円を提供します。これを、負債額の返済に充てます。今後、民事再生法172条の3の第1項に基づく債権者集会で同意を得た上で、裁判所の認可を受けたいとしています。
平戸の「旗松亭」再生計画案提出 中国人が買い取りへ(JCnet.)
3 再生計画案とは
再生計画案とは、債務者が債権者に対してどのように債務を返済するかについて定めたものです。具体的には、債権者の権利の全部又は一部の変更等に関する事項が内容として定められます(154条1項各号)。
4 再生計画案に関する決議について
(1)決議方法
裁判所は、再生計画案を決議にかける「決定」をする際に、議決権を行使する債権者の議決権の行使方法を定めなければなりません。本件において、「旗松亭」は債権者集会の期日において議決権を行使する方法を選択しました。債権者集会とは、裁判所が主催となり、債権者に民事再生手続に関する情報を開示し、法定の手続に関して決議等行う集会です。再生計画案に対する債権者の議決権行使は、確定した債権額に基づき定められる議決権の額に応じて行われます(民事再生法170条1項)。
(2)決議要件
企業法務担当者は、債権者の立場として再生計画案を可決させたいと考えます。そこで、再生計画案を可決させるためには、議決権を行使した債権者頭数の過半数かつ議決権総額の2分の1以上の賛成が必要となります(172条の3の第1項)。
Q.民事再生手続における再生計画案の決議の手続について教えてください(朝日中央グループ)
(3)再生計画案可決の効果
再生計画案が可決された場合、裁判所によって「認可」の可否を判断されることとなります(民事再生法174条1項)。再生計画が確定すれば、再生計画の記載内容について記載通りの効力が生じます(民事再生法176条)。したがって、債権者は再生計画で規定された内容に従い、債権回収ができます。
一方、再生計画案が否決された場合には、再生手続が廃止され、原則として破産手続に移行することとなります(民事再生法191条3号、250条)。この場合、債権者は清算型の破産手続に基づき債務者から債権回収を図ることになるので、再生型の民事再生手続に比べ回収される債権額が少なくなるといえます。
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