最高裁が初判断、消費者契約法の規制対象について
2017/01/25   コンプライアンス, 消費者契約法

はじめに

消費者団体が健康食品会社「サン・クロレラ販売」に対し新聞折込チラシが景表法、消費者契約法に違反するとして差止を求めていた訴訟の上告審で24日、最高裁は広告も消費者契約法の規制する勧誘行為に該当するとの初判断を示しました。今回は消費者契約法の規制について見ていきます。

事件の概要

訴状によりますとサン・クロレラ販売(京都市)は健康食品である「サン・クロレラA」「サン・ウコギ」等の勧誘・販売を行っておりました。また同社は「日本クロレラ療法研究会」の名称を用いて定期的にクロレラやアガリクスに関する新聞折込チラシを配布しておりました。それにはクロレラやウコギを摂取すると腰部脊椎管狭窄症や肺気腫、自律神経失調症、高血圧の症状が改善される等の記載がなされておりこれらの表示が景表法の規制する優良誤認表示や消費者契約法の規制する不実告知に当たるとし、適格消費者団体である「京都消費者契約ネットワーク」(京都市)が差止を求めて提訴しておりました。一審京都地裁は消費者団体側の主張を全面的に認め差止を命じました。二審大阪高裁は一転、被告は既にチラシ配布をやめていることから差止の必要性が無いとし、また不特定多数の読者向け広告は消費者契約法の規制する勧誘行為に該当しないとして退けました。

消費者契約法による規制

消費者契約法では、事業者と消費者との間の情報や交渉力の格差から消費者を保護するために民法や商法といった一般法の規制を強化しております(1条)。事業者が不当な勧誘行為を行い、それによって消費者が契約を締結した場合には取り消すことができ(4条1項~3項)、また事業者に一方的に有利になる契約条項は無効とされております(8条~9条)。具体的には不実告知(4条1項)、不利益事実の不告知(同2項)、不退去勧誘(同3項)、損害賠償義務の免除条項(8条)、違約金条項(9条)、その他消費者の利益を一方的に害するもの(10条)が挙げられます。

不実告知について

今回はその中でも特に不実告知について見ていきます。4条1項によりますと、事業者が消費者に勧誘をするに際し、「重要事項について事実と異なること」を告げ、それにより消費者が告げられた内容が事実であると誤認した場合には契約を取り消すことができるとしています。そして4条4項では「重要事項」とは「消費者契約の目的となるものの質、用途、その他の内容、対価、その他の取引条件」であって契約締結の判断に通常影響を及ぼすものとしています。つまり契約の目的物に関し、客観的に真実でないことを告げることを言います。例えば駅から徒歩10分以内の不動産であるとか腰痛の治る布団といった具合に対象商品の性質等が該当します。逆に床下の湿度が高いので換気扇を勧めた場合の床下の湿度は対象商品に関する性質ではないことから該当しないと言えます。なおこの点に関して昨年5月の改正により「消費者の生命、身体、財産その他」について「損害又は危険を回避するために通常必要であると」される事項も含まれることになり(改正法4条5項3号)今年6月3日施行以降は「床下の湿度」といったものも含まれることになります。

勧誘行為の範囲

上記消費者契約法の規制は「事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し」不実告知等を行った場合に適用されることになります。そしてこの「勧誘」に広告やチラシの配布も含まれるのかが問題となっております。本来「勧誘」とは特定の消費者の意思形成に対する働きかけを意味するとされており、不特定多数者への配布は該当しないように思われます。実際裁判例を見てもチラシや広告の勧誘該当性には否定的であり、特定の顧客に交付されたものに関しては不実告知等の判断材料には当たりうるとしているようです。この点につき実際にこのような広告等で誤認が生じている以上は取消を認めるべきであるとの学説もあります。

コメント

本件で大阪高裁は不特定多数向けのもの等、客観的にみて特定の消費者に働きかけ、個別の契約締結の意思の形成に直接に影響を与えているとは考えられないとしてチラシ配布は勧誘に該当しないとしました。消費者契約法の立法担当者が想定したものと同様に「特定」の消費者への働きかけを重視したものと言えます。これに対して最高裁は「不特定多数にあてた広告が個別の消費者の意思形成に影響することがあり、一律に勧誘でないとはいえない」としてチラシも勧誘に該当し得る旨判示しました。これは実質的に消費者に事実誤認を招き、契約締結への意思形成に影響を及ぼしうる点を重視していることから学説に近い考え方を取ったものと言えます。このように不特定多数者に向けた新聞広告や折込チラシも消費者契約法の規制対象に含まれる可能性が出てきました。また昨年の法改正により不実告知の範囲も上記のとおり拡充されております。有利誤認や優良誤認を規制する景表法と合わせて、広告を打つ際には注意が必要と言えるでしょう。

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