安売りGS「ベストプライス」破産手続開始決定、強制執行妨害目的財産損壊等罪とは
2016/12/10   コンプライアンス, 民事訴訟法, その他

1 はじめに

 「ベストプライス」の店舗名で安売りガソリンスタンドを全国に展開しているアルフレックス(本社:京都市中京区)は、2016年12月5日に京都地裁より破産手続開始決定を受けました。同社の役員が、以前に強制執行妨害目的財産損壊等罪違反で逮捕されました。そこで、今回は強制執行妨害目的財産損壊等罪について簡単に説明したいと思います。

2 事件の概要

 アルフレックスは、高い競争力を背景に店舗数を拡大していました。しかし、2014年2月に同社所有の不動産に対し、整理回収機構(本社:東京都千代田区)による仮差押の登記が表面化しました。その後、アルフレックスは、整理回収機構から債権回収を免れるために、会社資金を海外の口座に不正に隠したとして、2015年10月に役員らが強制執行妨害目的財産損壊等罪違反により、逮捕されました。

レスポンス(自動車業界に張り巡らされたニュースネットワーク)

3 強制執行とは

 強制執行とは、債権者が債務者に対して有する請求権の実現に向け、国家により債権者の有する請求権を強制的に実現する制度のことをいいます。具体的な手続は、民事執行法で規定されています。

4 強制執行妨害目的財産損壊等罪とは

 強制執行を妨害する目的で、以下のような行為をした場合には、「3年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金」又は双方が科されます(刑法96条の2柱書前段)。

(1)強制執行を受けた又は受けるべき財産について
 具体的には、当該財産を隠したり、壊したりし、若しくは財産の譲り渡しや債務の負担を装う行為が当たります(同条1号)。例えば、差押えを免れる目的で自己の預金口座から払戻しを受けた上で、払い戻された財産を隠す行為がこれに当たります(名古屋地裁平成17年3月22日)。また、同財産について現在の状態から変更し、価格の価値を下げた場合、又は強制執行の費用を増大させる行為も該当します(同条2号)。例えば、不動産競売において、競売物件の室内に大量の生ゴミを散乱させる行為がこれに当たります。

(2)金銭執行を受けるべき財産について
 具体的には、当該財産を無償等の不利益な条件で、譲り渡し又は権利の設定をする行為(同条3号)が当たります。そして、この場合には上記行為を受けた第三者も処罰の対象になります(同条柱書後段)。

刑法

5 コメント

 もし、アルフレックスが整理回収機構から債権回収を免れるために、会社資金を海外の口座に隠していたとしたら、刑法96条の2の第1号で規定される財産を隠した場合に当たるといえるでしょう。このように、企業が債権者からの債権回収を免れるために、財産隠しをすることで、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)等の民事上の責任だけでなく、強制執行妨害目的財産損壊等罪のような刑事上の責任を負うリスクがあります。したがって、企業は会社資産等につき、適切な財産管理をする必要があるといえるでしょう。

シェアする

  • はてなブックマークに追加
  • LINEで送る
  • 資質タイプ×業務フィールドチェック
  • TKC
  • 法務人材の紹介 経験者・法科大学院修了生
  • 法務人材の派遣 登録者多数/高い法的素養

新着情報

公式メールマガジン

企業法務ナビでは、不定期に法務に関する有益な情報(最新の法律情報、研修、交流会(MSサロン)の開催)をお届けするメールマガジンを配信しています。

申込は、こちらのボタンから。

メルマガ会員登録

公式SNS

企業法務ナビでは各種SNSでも
法務ニュースの新着情報をお届けしております。

企業法務ナビの課題別ソリューション

企業法務人手不足を解消したい!

2007年創業以来、法務経験者・法科大学院修了生など
企業法務に特化した人材紹介・派遣を行っております。

業務を効率化したい!

企業法務業務を効率化したい!

契約法務、翻訳等、法務部門に関連する業務を
効率化するリーガルテック商材や、
アウトソーシングサービス等をご紹介しています。

企業法務の業務を効率化

公式メールマガジン

企業法務ナビでは、不定期に法務に関する有益な情報(最新の法律情報、研修、交流会(MSサロン)の開催)をお届けするメールマガジンを配信しています。

申込は、こちらのボタンから。

メルマガ会員登録

公式SNS

企業法務ナビでは各種SNSでも
法務ニュースの新着情報をお届けしております。

企業法務ナビに興味を持たれた法人様へ

企業法務ナビを活用して顧客開拓をされたい企業、弁護士の方はこちらからお問い合わせください。