佐村河内氏がJASRACを提訴、著作権の帰属について
2016/10/07   知財・ライセンス, 著作権法

はじめに

作曲家の新垣隆氏による代作が発覚していた佐村河内氏が日本音楽著作権協会(JASRAC)に対し楽曲の使用料約700万円の支払いを求めていた訴訟の第1回口頭弁論が6日、東京地裁で開かれました。楽曲の著作権は両氏のいずれに帰属するのか。著作権の帰属について見ていきます。

事件の概要

佐村河内氏は聴覚障害者でありながら「交響曲第1番(HIROSHIMA)」等の数々の名曲を作曲してきたとして脚光を浴びてきましたが2014年、聴覚障害についての疑問を投げかける週刊誌の記事を切っ掛けとして作曲家新垣隆氏が代作していたことが発覚しました。音大で講師を勤めていた新垣氏は佐村河内氏のゴーストライターとして18年間で20曲以上を作曲してきたとしています。これを受けてJASRACは佐村河内氏との著作権の管理契約を解除していました。また代作が発覚して以降はJASRACに入ってくる楽曲の使用料を佐村河内氏に支払わず留保していました。佐村河内氏は契約解除までに発生した未払い使用料約700万円の支払を求め提訴していました。JASRAC側はもともと両氏のいずれが著作権を持っていたのか、またいつから佐村河内氏に著作権があったのかが不明として争う姿勢を見せております。

著作権とは

著作権については以前にも取り上げましたが、ここでも簡単に触れておきます。著作権とは著作物につき著作者に与えられる財産権の一種で、著作物を排他的に利用する権利が与えられます。著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲の属するもの」(著作権法2条1項1号)と定義されております。作成者の個性が表現されたものであれば基本的に著作物と言えます。著作権は特許権や意匠権等の他の知的財産権とは違い登録等をすることを要せず、著作物を作成した時点で発生します(51条)。しかし著作権を一般に明示するために文化庁に登録することもできます。そして著作権は著作者の死後50年を経過するまで保護されることになります(51条2項)。

著作権の帰属

著作権は原則的に著作者、すなわち著作物の作成者に帰属することになります。しかし著作権も財産権の一種ですのでこれを第三者に譲渡することは可能です。その場合には著作権者は譲渡された人に移転することになります。作詞家や作曲家等から音楽出版社が著作権を買受け、それをJASRAC等に管理委託するといったことは一般的に行われております。つまりは著作者との契約に依存するということになります。それではゴーストライターとして代作を委託する場合はどうでしょうか。こういった契約では通常委託者はゴーストライターに代金を支払って著作物の著作権を譲り受け、自己の著作物として使用・収益することになります。しかし一般のユーザーや消費者は著作権者が真の作成者であると信じて利用することから、こうしたゴーストライターによる代作の委託契約は利用者の信頼を裏切る行為であり、公序良俗に反して無効であると考えられており(民90条)そのように判断した裁判例も存在します。

コメント

JASRACの著作権信託契約約款によりますと、著作権の存否又は帰属に関して疑義が生じた場合には著作物使用料の分配を必要な範囲及び期間において保留することができるとしています。佐村河内氏の楽曲が新垣氏による代作であると発覚したことでJASRACは著作権の帰属に疑義が生じたとして使用料の分配を保留しておりました。新垣氏は自己の作曲した楽曲については代金の支払いを受けているので自分に著作権は無い旨当初から主張しておりました。これはゴーストライターとしての委託契約によるものと思われます。しかし一般にゴーストライターによる代作委託は上記のように無効であると言われており、裁判所もそのように判断する可能性があります。その場合には著作権は新垣氏に帰属することになります。新垣氏は仮に自己に著作権が帰属することになっていたとしても放棄する意思がうかがわれることから、今後証人等として出廷してその旨証言することも考えられますがそうなった場合でもいつから放棄したと判断されるかが問題となります。当事者の意思を尊重し最終的には佐村河内氏の著作権が認められる可能性は高いと言えますが裁判所の判断に注目が集まるでしょう。著作権の帰属は公告やWebデザイン等を外注した場合にもよく問題となります。契約書や約款等での明確な扱いを心がける必要があると言えるでしょう。

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