再雇用を巡りトヨタに賠償命令、継続雇用制度について
2016/09/30 労務法務, 労働法全般, メーカー

はじめに
元従業員が再雇用の際に別業務を提示されたことは不当であるとしてトヨタ自動車に対し地位確認と賃金支払を求めていた訴訟の控訴審で名古屋高裁は28日、一審を一部覆し約120万円の賠償を命じました。高年齢者雇用安定法が規定する継続雇用制度について見ていきます。
事件の概要
トヨタ自動車で事務職として働いていた原告男性(63)は2013年に60歳の定年を迎える際にトヨタ自動車の継続雇用制度である「スキルドパートナー」として5年間の再雇用を希望しました。しかしトヨタ自動車は能力が同職種として再雇用される基準に達していないとして1年雇用のパートタイム職を提示しました。そのパートタイムでの業務内容が事務職ではなく、社内の清掃業務であったため男性は提示を拒否し再雇用はなされませんでした。男性はトヨタ自動車に対し、事務職での地位の確認と賃金の支払を求め名古屋地裁に提訴していました。一審名古屋地裁は今年1月、会社側の主張を認め請求棄却判決を言い渡していました。
高年齢者の雇用確保
急速な高齢化に対応し、高年齢者が年金受給年齢まで働き続けられる環境の整備を目的とし平成24年に高年齢者雇用安定法が改正されました。現行の高年齢者雇用安定法によりますと定年制度を設けている事業者は雇用するの高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するために①定年の引き上げ②継続雇用制度の導入③定年制度の廃止のいずれかの措置を講じなければならないとしています(9条1項)。そしてこの規定に反し措置を講じない事業者に対しては厚生労働大臣は必要な助言や指導を経て勧告をし、それでも従わない場合には事業者名等を公表することになります(10条)。以上の他にも雇用する高年齢者の就業条件の改善や再就職の援助等を行う責務が事業者には課されますが、いずれも努力義務となっております(4条、15条等)。
継続雇用制度
上記のように事業者は定年の引き上げ、継続雇用制度導入、定年制度の廃止のいずれかの措置を講じる必要がありますが、多くの企業では継続雇用制度の導入を採用しております。継続雇用制度は企業によって呼び名が異なりますが一般的に再雇用制度と勤務延長制度の2種類に分けられます。再雇用制度とは定年を迎えた従業員を一旦退職手続を取った上で新たに雇用するというものです。再雇用の際は正社員に限らず、パート、嘱託等の形態を採ることが出来ます。勤務延長制度とは定年を迎えた従業員を退職させることなく、そのままの雇用形態で延長することを言います。平成24年改正前の規定では労使協定によって定めた基準により継続雇用制度を利用できる従業員を限定することができていましたが、現行法ではそれができなくなり、対象は全ての従業員となりました。継続雇用制度の導入に際しては、どのような内容の制度にするかは各企業の裁量に委ねられております。しかしあくまでも65歳まで安定した雇用を確保するという法の趣旨に合致したものでなくてはなりません。
コメント
本件で一審名古屋地裁は事務職での「スキルドパートナー」の基準を満たしていないとするトヨタ自動車側の主張を認めました。しかし二審名古屋高裁は定年後にどのような労働条件を提示するかについては企業に一定の裁量があると認めた上で適格性を欠くなどの事情がない限り別の業務の提示は法の趣旨に反するとしました。そして本件の1年雇用の清掃業務の提示は継続雇用の実質を欠き通常解雇と新規採用に当たり、社会通念上労働者には到底受け入れがたいものとして違法と判断しました。継続雇用制度の内容とその運用に関しては高年齢従業員の雇用の安定確保という法の趣旨の範囲内で企業に裁量が認められるということです。そして法の趣旨の範囲内であるかは社会通念に従って判断されると言えます。また多くの企業では同業務での再雇用でも賃金は大幅に減額している場合が多いと思われますが、今年5月には東京地裁で経営状況等の特段の事情がない限り正規社員と再雇用で格差を設けることは労働契約法20条に違反するとの判決が出ております。高年齢者の再雇用については本件高年齢者雇用安定法だけでなく労働契約法による規制にも注意を払う必要があると言えるでしょう。
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