仕事中に事故が起きた場合に責任は
2016/09/29   コンプライアンス, 民法・商法

事案の概要

東京ドームで25日に行われた、歌手で俳優の福山雅治さんのコンサートで、客席に向けて発射されたテープが演出担当の女性スタッフの右目に直撃し、女性が眼球破裂などの重傷を負っていたことが分かった。
 警視庁富坂署によると、コンサート終盤の同日午後9時10分頃、「キャノン砲」と呼ばれる長さ約80センチ、直径約8センチの筒から、テープを巻いた直径約3センチの玉35個を飛ばした際、玉が女性の右目を直撃した。女性はテープを装置に詰めたり、他のスタッフからの発射連絡を受けて、周囲に注意を呼び掛けたりする安全管理担当だったという。今回のライブとは別の関係者によると「一般的にライブの演出は、特別効果に関わる者だけではなく、スタッフ全員に発射のタイミングや場所などを知らせてある」という。富坂署では業務上過失傷害の疑いもあるとみて、演出を担当していたライブ関係者らから事情を聞いている。そこで今回のような事件が起きた場合の刑事責任・民事責任と、それが起きた場合の対応について見ていきたい。

業務上過失致傷とは

 業務上過失致業務上過失致傷とは業務上必要な注意を怠り、よって人を傷害させる犯罪をいう。業務とは日常用語の職業・仕事の意味と異なり、本罪では「社会生活上の地位に基づき反復継続して行う行為であって、生命身体に危険を生じ得るものという意味になっている。
過失とは注意義務違反のことであり、行為者を基準として予見可能性、予見義務違反、結果回避義務があるかで判断される。
 その判断過程は、まず予見可能性の有無が判断される。今回でいえばキャノン砲のテープがスタッフにあたり怪我させる可能性があるかである。予見可能性があるとなれば予見義務違反があるとされる。
 予見可能性があればさらに結果回避義務が生じる。予見可能であった出来事が生じた場合でも結果を生じないようにしておく義務である。この義務に反して結果が発生した場合に注意義務違反として過失があるとされる。今回でいえば結果回避義務はキャノン砲に玉を詰めたり、近くにいるスタッフにはゴーグルやアイガードなどを着用させたり、発射連絡を受けてからスタッフが離れるまでの充分な時間を確保するという義務などが考えられる。
 この義務に反して、スタッフにゴーグルやアイガードを着用させなかったり、発射連絡を受けてからスタッフが離れるまでの充分な時間を確保していなければ結果回避義務違反行為となる。

安全配慮義務とは

 また、怪我をした女性スタッフと発射装置を担当していた会社との間で民事損害賠償も問題となる。この場合、女性スタッフと発射装置を担当していた会社に契約関係があるかにもよるが安全配慮義務違反が問題が生じる。安全配慮義務とは企業の指揮命令下で従業員が労働する過程において、従業員の生命および身体を危険から保護するよう配慮する企業の義務である。安全配慮義務は2008年に労働契約法5条に明記された。上記と同様に予見可能性、予見義務違反、結果回避義務があるかで判断される。
 安全配慮義務とは雇用関係などに信義則上付随する義務である。安全配慮義務を充分に尽くしたと認められない場合には債務不履行による損害賠償責任が生じる。

企業ができることとして

 商品の欠陥や整備不良による事故で、事故を防止するための措置を講じていない場合、長時間残業など過重労働による疾病、労災事故、自殺を防止するための措置を講じていない場合、業務中の事故で怪我をした場合に怪我を防止する処置を講じてない場合など安全配慮義務が問われるケースは多々ある。
 安全配慮義務は具体的な状況によって内容が判断されるが、一般的に企業ができる措置として次のようなものがある。
①製品リコール情報の周知徹底
②業務を行う施設、設備、機械、材料等に不備・欠陥によりおこる災害等の防止
③健康診断などで労働者の健康状態の把握及び健康状態が悪化を防ぐ措置を講じて過重労働で健康を害さないようにすること
④いじめ、パワハラ、セクハラ、モアハラなどを防止する措置を講じること
⑤時間外労働削減や有給取得の促進
などである。
労災関係の安全配慮義務対応として企業ができることについてはこちらを参照 企業の安全配慮義務

安全配慮義務違反があったとしたら

安全配慮義務違反があった場合に企業が行うべきこととして次のようなものがある。
①事実確認や原因究明 まずは事実や原因について調査をすること。調査チームを立ち上げることもありうるし、責任者が逮捕されたとしても調査チームが立ち上がるようにしておくことなど。
②被害拡大防止    商品であれば回収や消費者への注意喚起。業務中の事故なら原因物の使用中止。
③事実の公表     弁護士などを利用し説明責任を果たすこと
④再発防止策     安全性の再検証や、マニュアルの徹底、労働環境の見直しなど

コメント

 安全配慮義務に違反し、対応を誤れば企業の信用・信頼がなくなる恐れがあります。まずは安全配慮義務に違反しないことに尽力する必要があります。それでも違反することが起きてしまった場合には隠蔽・放置などせずしっかり対応する必要があります。
 事故にあわれた方の一刻も早い回復を祈るばかりです。

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