下請法違反でファミリーマートに勧告
2016/09/06 コンプライアンス, 下請法, 小売
はじめに
コンビニ大手のファミリーマートが、売れ残った商品の代金を負担させるなどのいわゆる「下請けいじめ」を繰り返し、納入業者20社に対して合わせて6億5000万円を不当に支払わせていたとして、公正取引委員会から8月25日、勧告を受けました。そこで、今回は下請法について取り上げたいと思います。
事案の概要
公正取引委員会によると、東京・豊島区に本社のあるファミリーマートは、プライベートブランドと呼ばれる自主開発商品の製造を委託している納入業者に対して、下請け法に違反する不当な行為を繰り返していました。全国の店舗にデータ配信する商品カタログの制作費のほか、新しい店舗の開店から3日間で売れ残った商品の仕入れ代金、さらにポイントカードの利用やセールでの商品の値引き分に相当する金額を支払わせていたということです。こうした下請けいじめは納入業者20社に及び、支払わせた金額は、2014年7月から2016年6月までの2年間に合わせておよそ6億5000万円に上ったということです。これは、公取委が勧告内容の公表を開始した2004年以降で、減額行為額としては4番目の大きさとなります。公正取引委員会は、下請法に基づいて返金を求めるとともに、再発防止を徹底するよう、8月25日に勧告しました。
下請法について
下請法の正式名称は、「下請代金支払遅延等防止法」といいます。下請法の目的は、下請取引の公正化・下請事業者の利益保護とされています(1条)。また、下請法の対象となる取引は事業者の資本金規模と取引の内容で定義されています(2条1項~8項)。そして、4条1項、2項では親事業者の禁止事項を規定しています。以下に禁止事項の概要をまとめておきます。
●親事業者の禁止事項(4条1項,2項)
(ア)注文した物品等の受領を拒むこと。(4 条1 項1 号)
(イ) 下請代金を受領後60日以内に定められた支払期日までに支払わないこと。(4 条1 項2 号)
(ウ) あらかじめ定めた下請代金を減額すること。(4 条1 項3 号)
(エ) 受け取った物を返品すること。(4 条1 項4 号)
(オ) 類似品等の価格又は市価に比べて著しく低い下請代金を不当に定めること。(4 条1 項5 号)
(カ) 親事業者が指定する物・役務を強制的に購入・利用させること。(4 条1 項6 号)
(キ) 下請事業者が親事業者の不公正な行為を公正取引委員会又は中小企業庁に知らせたことを理由としてその下請事業者に対して,取引数量の削減・取引停止等の不利益な取扱いをすること。(4 条1 項7 号)
(ク) 有償で支給した原材料等の対価を,当該原材料等を用いた給付に係る下請代金の支払期日より早い時期に相殺したり支払わせたりすること。(4 条2 項1 号)
(ケ) 一般の金融機関で割引を受けることが困難であると認められる手形を交付すること。(4 条2 項2 号)
(コ)下請事業者から金銭,労務の提供等をさせること。 (4 条2 項3 号)
(サ)費用を負担せずに注文内容を変更し,又は受領後にやり直しをさせること。(4 条2 項4 号)
本件では、ファミリーマートが下請代金の減額を要求していた事案であり、上記の(ウ)下請代金の減額の禁止(4 条1 項3 号)の規定に違反します。そこで、公正取引委員会は7条2項の規定に基づき、返金を求めるとともに、再発防止を徹底するよう勧告を行いました。
コメント
ファミリーマートは全国に1万1000余りの店舗を展開し、年間の売り上げはおよそ2兆円に上っていて、今月9月1日には業界4位のサークルKサンクスを傘下に持つユニーグループ・ホールディングスとの経営統合を果たしました。今回の勧告は、この経営統合の直前に報道されました。ファミリーマートは返金を実行し、業績への変更はないことをホームページで発表しました。しかし、経営統合直前に法律違反が明らかになればマイナスなニュースとして、株価等への影響がありえます。
下請法違反を防止するために、下請取引に関係する企業の法務部門としては、一般的な下請法の理解を深め、契約書の段階で下請法違反の取引がないかチェックしていく必要があります。加えて、事業部の部長や取締役などビジネスサイドの上層部に対して、日頃から下請法違反の法的リスクの説明を行い、情報共有を図っていく必要もあります。また、万が一に備え、勧告等を受けた場合の報道対応や、返金の対応手順などの危機対応を確立しておくことが望ましいと思われます。
関連サイト
関連コンテンツ
新着情報
- 解説動画
- 奥村友宏 氏(LegalOn Technologies 執行役員、法務開発責任者、弁護士)
- 登島和弘 氏(新企業法務倶楽部 代表取締役…企業法務歴33年)
- 潮崎明憲 氏(株式会社パソナ 法務専門キャリアアドバイザー)
- [アーカイブ]”法務キャリア”の明暗を分ける!5年後に向けて必要なスキル・マインド・経験
- 終了
- 視聴時間1時間27分
- セミナー
- 岡部 真記弁護士
- 森下 実名子弁護士
- 【リアル】契約審査のイロハ(座談会)-法務担当者向け 法務基礎シリーズ-
- 2024/07/18
- 15:30~17:00
- まとめ
- 改正障害者差別解消法が施行、事業者に合理的配慮の提供義務2024.4.3
- 障害者差別解消法が改正され、4月1日に施行されました。これにより、事業者による障害のある人への...
- 業務効率化
- Lecheck公式資料ダウンロード
- 弁護士
- 髙瀬 政徳弁護士
- オリンピア法律事務所
- 〒460-0002
愛知県名古屋市中区丸の内一丁目17番19号 キリックス丸の内ビル5階
- ニュース
- 神戸医師の過労自殺で第一回口頭弁論、自己研鑽の労働時間該当性が争点に2024.4.24
- NEW
- 当時26歳だった医師がうつ病を発症し自殺したのは、勤務先の病院が長時間労働の改善を怠ったことな...
- 業務効率化
- LAWGUE公式資料ダウンロード
- 解説動画
- 江嵜 宗利弁護士
- 【無料】新たなステージに入ったNFTビジネス ~Web3.0の最新動向と法的論点の解説~
- 終了
- 視聴時間1時間15分
- 弁護士
- 野口 大弁護士
- 野口&パートナーズ法律事務所
- 〒530-0047
大阪府大阪市北区西天満1-2-5 大阪JAビル12階