もんじゃ焼き店運営会社、コロナ雇用調整助成金を過去最高の49億円不正受給
2024/04/05   コンプライアンス, 行政対応

コロナ雇用調整助成金で過去最高額の不正受給


厚生労働省東京労働局は3月29日、東京・月島などでもんじゃ焼き店を運営する会社が、ロナ対策の雇用調整助成金を49億円以上不正受給していたと発表しました。これは、一社当たりの不正受給額として過去最高とのことです。

過去には、不正受給が判明した会社の理事が執行猶予付きの有罪判決を受けるなど、一時期、不正が相次いで発覚したことで、厚生労働省は対応を強化しています。

 

不正受給の内容


今回事業所名を公表されたのは、もんじゃストリートなどで有名な東京都月島にて、約30店舗のもんじゃ焼き店などの運営を行う加納コーポレーション株式会社です。新型コロナウイルスが猛威をふるい始めた2020年4月から2022年9月までの期間、実際には単に従業員の勤務予定がない日だったにも関わらず、その日を“新型コロナウイルスによる事業主都合の休業日”と偽り、「従業員に対し、店舗休業による休業手当を支払った」と虚偽の申請を行ったといいます。

こうした手口による不正受給は約49億7000万円にのぼり、1社の不正受給額としては過去最大となりました。なお、会社は不正受給した全額を返還しているということです。

雇用調整助成金を不正に受給した事業主の公表について(厚生労働省 東京労働局)

 

雇用調整助成金の不正受給問題


今回、加納コーポレーションが不正受給した「雇用調整助成金」とは、景気の変動や産業構造の変化等の経済上の理由で、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図るための休業・教育訓練・出向に要した費用を助成する制度です。新型コロナウイルス感染拡大期はもちろんのこと、大きな地震等の災害時などに数多く活用されます。

この雇用調整助成金については、新型コロナ関連の不正受給などが全国的に発生しており、中には刑事事件に発展し、有罪判決を下された事例もあります。

 

■大津漁業協同組合 元専務理事が有罪判決
茨城県の大津漁業協同組合の元専務理事は、2020年7月から2021年12月までの期間、漁協の直営食堂の従業員3人について、実際には従業員は出勤していたにも関わらず、「休業した」とする虚偽の申請をし、雇用調整助成金約183万円をだまし取ったとして詐欺罪に問われました。判決の中で裁判所は、
 
・特例措置を悪用し不正受給することを他の職員から提案されて犯行におよんだこと
・不正受給したお金は、私利私欲のためではなく、食堂の経営に充てられていたこと
・不正受給したお金が返還される見通しであること
 
などの事情を勘案しつつ、犯行が元専務理事の指示によるものである点を重視。懲役2年、執行猶予3年の有罪判決を言い渡しました。


 

厚生労働省も不正受給対策に乗り出す


雇用調整助成金の不正受給が相次いだことで、2021年12月、厚生労働省は対応の強化を発表しています。具体的には、以下の対応を行うと示唆しています。

(1)不正が疑われる場合のみならず、雇用調整助成金等の申請をした(あるいは支給決定を受けている)事業主の一部に対する事業所訪問・立入検査の実施
(2)事前予告なしの調査(出勤簿や賃金台帳など休業の実態確認に必要な書類の確認)

ちなみに、これらの立入検査は雇用保険法第79条に基づくもので、検査を拒むなどの場合は、罰則が科せられることがあるとしています。

また、不正受給判明時には、以下の金額の合計額につき、返還請求が行われるとされています。
①不正発生日を含む判定基礎期間以降に受給した助成金の全額
②不正受給した助成金の額の2割に相当する額
③延滞金(不正受給の日の翌日から納付の日まで年3分)」

さらに、事案に応じて、事業者名などが公表されるほか、特に悪質と判断された場合には、刑事告訴などが行われるということです。

雇用調整助成金等の不正受給への対応を強化します(厚生労働省)

 

コメント


新型コロナウイルスの感染が急速に拡大したことで、国の対策が急務となり、当初は給付金の審査もそこまで厳しく行われていなかったといわれています。しかし、そうした制度の穴を突いて行われた不正受給に対しては、厳正な処分が下されることになります。

今回、不正が判明した会社に対し、刑事罰が科せられるかは、現時点では不透明ですが、もし悪質だと認められた場合には経営幹部など、不正受給に関わった人間が逮捕・起訴されるおそれがあります。今後の動向に要注目です。

 

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