海外赴任中の社員の自殺と会社の責任
2016/07/19   労務法務, 労働法全般

1、事案の概要

 大手塗料メーカー「関西ペイント」(本社・大阪市)の若手社員が5年前、海外出張中に自殺したのは会社側が心身のケアを怠ったためだとして、社員の両親が約1億2800万円の賠償を求めた訴訟が大阪地裁であり、今月7日付で和解したことが分かった。会社側が両親に弔意を表し、解決金500万円を支払う内容。

2、社員の自殺に対して会社はいかなる責任を負うか

(1)労災保険制度上の取り扱い
 海外での疾病や自殺、事故を想定すると、「労働者災害補償保険法」(労災保険法)による 労災保険認定が問題になる。なお、海外派遣者は原則として労災保険が適用されないが、「海外派遣者特別加入制度」が あり、これに加入することで適用が受けられる。
平成19年5月24日判決

(2)民法上の取扱い
 海外赴任者の健康管理については、派遣元企業に安全配慮義務(民法415条)がある。したがって、会社がとるべき安全配慮義務を欠いたと認められれば、派遣元企業が債務不履行責任を負う。
 また、不法行為に基づく責任(民法709条)が認められる場合もある。
最判平成12年3月24日

3、会社の取りうる対策は~リスク管理体制~

 海外赴任者の健康管理に関する日本の法律としては、6 カ月以上の海外派遣前・後の健康 診断実施を定めた「労働安全衛生規則」(第四十五条の二)等が挙げられる。これら法規は企業としての必要最低限の対応を定めたものであり、実際には各企業が産業保健スタッ フと検討を重ね、より適切な健康管理体制を構築することが求められている。

 具体的には
・赴任前に必要かつ十分な情報を伝える
・相談できる体制づくりの構築
EX産業保険スタッフによる定期的な電話面談など

4、おわりに

 企業のグローバル展開が活発化し、最近は海外生活に不慣れな社員も派遣されている。特に途上国では、生活インフラの不足や政情不安で強いストレスを抱えやすいが、本社が状況を把握しきれていない例も目立つという。
 以上の状況を踏まえ、法務部員としては、社員が海外で過度な負担にさらされることのないような制度を構築するとともに、現地法人の経営・管理にあたっては、企業に求められる責任を十分理解することが求められる。

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