海外で知財訴訟に巻き込まれた時のために
2016/06/23 海外法務, 知財・ライセンス, 特許法, 商標法, その他

背景
海外市場での日本企業の販路拡大や営業展開、又は模倣被害対策のため、海外において我が国の中小企業による特許権や商標登録の出願件数が増加している。そのことから、海外で我が国中小企業が知的財産権侵害に関する係争に巻き込まれる危険性が増大している。
また、係争に巻き込まれた場合には、それが海外であるがゆえに多額の費用を要するため、致命的な損害を被る危険がある。
これまでの特許庁の支援策
そこで、特許庁は、海外における知財活動について、これまでに外国出願費用の助成、海外での模倣品に関する調査・警戒に要する費用の助成、商標取消費用等の助成、係争の弁護士費用、訴訟費用の助成等を行ってきており、日本企業のブランド保護のためにさらなる強化が求められている。
特許庁による海外知財支援(https://www.jpo.go.jp/sesaku/pdf/pamph/pamph16_print.pdf)
制度の内容
これまで、我が国において海外での知的財産訴訟費用を 賄う保険制度が存在しなかった。しかし、前述のとおり、海外での訴訟に巻き込まれてしまうと、企業は多大な損害を被り、ひいては会社存続危機のおそれもある。
そこで、特許庁は、平成28年度から日本商工会議所、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会、損害保険ジャパン日本興亜(株)、東京海上日動火災保険(株)、三井住友海上火災保険(株)の協力のもと、海外知財訴訟費用保険制度を創設した。同保険は、中小企業が海外で特許権等の侵害で訴えられた場合に弁護士相談や通訳にかかる費用、証拠調査などに必要な金額を保険金として支払うものである。そして、中小企業(全国規模の中小企業等を会員とした団体の会員)が保険に加入する際に掛金の2分の1を補助するというものである。
これによって、海外での知財係争による多額なコストによって中小企業が、事業撤退や存続の危機に追い込まれるリスクが減少することが期待される。
また、日本の中小企業が海外での事業展開をするにあたっての懸念の一つが払拭され、今後、よりグローバルな営業活動が期待される。
制度の概要
運営団体:日本商工会議所、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会
引受保険会社:損害保険ジャパン日本興亜(株)、東京海上日動火災保険(株)、三井住友海上火災保険(株)
応募資格:商工会議所、商工会、中小企業組合の会員となっている、中小企業基本法で定める中小企業
募集期間:平成28年6月8日(水)から
保険期間:2016年7月1日から2017年6月30日
コメント
インターネットの普及により、ブランド情報の入手が容易となり、中国等の海外企業による模倣件数は増加していることから、特許庁により様々な支援が行われているが、これまで訴訟保険は存在していなかった。
また、特許庁のアンケートによれば、8パーセントの企業が海外で特許権侵害の警告を受けた経験があると回答していることから、海外市場での訴訟沙汰は今や他人ごとではない。海外で知財訴訟に巻き込まれるリスクへの対策を強化するためにも、海外における知財訴訟費用保険を創設し、掛金の2分の1が補助される海外知財訴訟保険は、企業にとって魅力的であるといえる。
中小企業は、特許庁による従来からの知財費用支援制度とともに今回新たになされることになった知財訴訟費用保険制度を積極的に活用するべきである。
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