ワタミ初の労働組合結成
2016/06/24 労務法務, 労働法全般, 外食
1.概要
5月16日、労組「ワタミメンバーズアライアンス」(組合員数約1万3千人)が結成され、入社すると同労組に加入することになる「ユニオンショップ協定」を労使で結びました。グループの正社員約2千人とアルバイト約1万5千人の大半が加入しました。
2.ワタミの労働環境
ワタミでは、今まで経営陣が「労働者は家族だ」という経営理念を有していたことから労働組合の結成に否定的でした。しかし、ワタミは、長時間労働などで「ブラック企業」と批判されていました。また、2008年に新入社員が過労自殺し、当時の代表取締役や同社が訴えられ(昨年12月和解)、企業体質への批判が集まっていました。そこで、労務管理を見直していました。
3.新入社員の過労自殺の裁判経過
ワタミグループの居酒屋「和民」に勤めていた娘を過労自殺で失った遺族が2013年12月9日、ワタミや当時代表取締役だった渡辺美樹氏らを相手どり、約1億5300万円の損害賠償を求める裁判を東京地裁に起こしました。 美菜さんは2008年4月、ワタミ子会社ワタミフードサービスに入社。神奈川県横須賀市内の店舗に配属されたが、同年6月、社宅近くで自殺しました。月141時間の残業があったとして12年2月に労働災害に認定されています。
亡くなった美菜さんの過酷な労働環境は以下の通りです。
(1)一週間の座学後、強制的に長時間労働
(2)最大7日間連続の勤務
(3)研修もまったくないまま、なれない大量の調理業務
(4)休日や勤務終了後もレポート書きに追われ、十分な休息時間がとれなかった
(5)体調不良を訴えていたにもかかわらず会社はなんら適切な措置をとらなかった
(6)さらに朝3時に閉店後も電車が動いていないため帰宅できずお店にいて始発電車で帰ることとなり、過度な疲労と精神的負担が蓄積されました。
本件訴訟は2015年12月8日、東京地裁(吉田徹裁判長)で和解が成立しました。ワタミ側が責任を認め約1億3千万円を支払うことになりました。和解内容には、付帯事項として社員らの長時間労働防止策も盛り込まれました。
4.コメント
近年では、ブラック企業とレッテルを張られた場合、企業体質への批判が集まり、客離れで業績も悪化するという事態にまで陥ります。そこで、企業としては労働環境を整備して事前に紛争を予防することが重要となります。企業としては相談窓口の設置や上司と連携することにより、①問題発生のキャッチ、②初期段階での対応、③信頼される解決機能、この3つの観点から紛争を事前に予防することが必要となります。
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