フリーサイト掲載の写真使用で著作権侵害?
2016/01/07   知財・ライセンス, 著作権法, その他

1 はじめに

 少々古い話題となってしまうが、昨年4月15日に東京地裁で下された判決をご存知だろうか。写真やイラスト、映像素材などを販売している業者が、自社の写真を無断で使用した者に対して、著作権侵害に基づく損害賠償請求を行った事例であり、原告の請求が認められたものであるが、なんと被告は写真をフリーサイトから入手したものであると主張していたのである。フリーサイトから入手した写真であるのになぜ著作権侵害が認められたのか、事件の概要だけをみれば不思議に思うところである。そこで、この判決を少し掘り下げてみようと思う。

2 判決の事例について

 判決では、まず、利用料金を支払わない限り、原告写真をコピーしようとした際に注意事項が表示されることから、原告写真が使用料無料のコンテンツ(フリー素材)を扱うウェブサイト等(フリーサイト)に掲載されることはありえないと認定している。そして、これを前提として、被告が具体的にどのフリーサイトから原告写真を取得したか明らかにしなかったことから、被告が原告写真をフリーサイトから取得したとは到底考えられない、と結論付けるに至っている。とすると、本事件は厳密にはフリーサイトに掲載されていた画像を使用した者に著作権侵害が認められたという事例ではないこととなる。

3 注意すべきこと①

 しかし、裁判所は、同判決の中で以下のように述べている。
『一般に、他人の著作物を利用するには、その著作権者の許諾を得ることが必要であるから(著作権法63条1項及び2項)、他人の著作物を利用しようとする者は、当該著作物に係る著作権の帰属等について調査・確認する義務がある』
 つまり、他人の著作物を利用しようとする際には、著作物の著作権について、利用者は調査・確認をすることが求められるということである。そして、裁判所はさらにこうも述べている。
『仮にE(被告)が本件写真をフリーサイトから入手したものだとしても、識別情報や権利関係の不明な著作物の利用を差し控えるべきことは、著作権等を侵害する可能性がある以上当然である』 ※ ()内は筆者による追加
 つまり、あるウェブサイトがフリーサイトと謳い画像等を無料で提供していたとしても、フリーサイトから取得した画像であるから著作権を侵害しないだろうと安易に信用してはならず、利用者は使用する著作物の著作権を調査確認しなければならないということである。

4 注意すべきこと②

 さらに、フリーサイトと一口にいっても様々なサイトが存在することを認識しておかねばならないだろう。中には被告の主張したように、元々有料の素材を無料と謳って提供している悪質なウェブサイトも存在しているかもしれない。また、悪質なウェブサイトでなくとも、そのサイトの利用規約等をしっかり読み込む必要がある。というのも、提供素材の利用範囲を限定している場合や(商用利用の可否など)、利用方法を限定している場合(改変・加工等の可否など)があるからだ。「フリー」という言葉自体が何を指しているのかチェックしておくことも必要だ。簡単な確認事項の失念や思わぬ勘違いが災いし、著作権侵害に基づく損害賠償請求事件へと発展しないようにしたい。
 同判決では、こうも述べている。
『警告を受けて削除しただけで、直ちに責任を免れると解すべき理由もない』
 警告を受けたときに対処すれば大丈夫だろう、このような軽率な判断をしないよう注意したい。そのためにも、やはり利用するフリーサイトの規約や掲載された素材の権利の調査・確認を怠らないようにすべきである。

5 参考及び引用元判例

判決原文

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