エイベックス、JASRACに対抗し著作権管理に参入
2015/10/21   知財・ライセンス, 著作権法, その他

1、エイベックスがJASRACから著作権管理業務の一部を系列会社に移転

 エイベックス・グループ・ホールディングスがJASRACに任せた約10万曲の著作権管理を系列会社に移す手続を始めたと10月16日付け電子版日本経済新聞と朝日新聞デジタルを含めた複数のメディアが報じている。
 果たしてエイベックスの狙いは何か。

2、著作権管理の現状

 著作権管理事業者は、レコード会社や放送局、カラオケ店、飲食店等から著作物の使用料を受取り、作詞家・作曲家らの著作権者に分配している。JASRACはこの事業の国内最大の事業者であり300万曲以上の曲を管理し業界のシェアの約98%を握ってる。

3、最高裁判決について

 JASRACは、放送局等との間で放送事業収入の1.5%を支払えばJASRACが管理する曲を使いたい放題という包括徴収方式を採用していた。この方式について公正取引委員会はいわゆる私的独占の禁止(独占禁止法2条5項、同法3条)に該当し排除措置命令(同法7条)を出した。これに対してJASDACは独占禁止法3条違反の成立を争い審判を請求し、その結果公正取引委員会は排除措置命令を取り消す審決を行った。そして、この審判の結果を踏まえてエイベックスの系列会社イーライセンスは、公正取引委員会がJASRACに対して行った取消審決を不服として取消訴訟を提起していた。
 今年の4月28日最高裁は「JASRACは他業者の参入を妨害している」との判決を出し公正取引委員会がJASRACに対して最初に行った排除措置命令を正当とした。
 その結果JASRACは包括徴収方式を採用できなくなっている。

4、エイベックスのねらい

 エイベックスによると系列会社イーライセンスに管理を移す事業はCDの販売、放送レンタルに係る権利に限定されコンサートやカラオケ、店舗のBGMを含む演奏権はJASRACに残すという。イーライセンスはJASRACと競合する分野で使用料を安く設定し作詞家・作曲家等の権利者への分配金を多く分配していく方針を打ち出している。さらに、無償の宣伝用CDを作るとき使用料をとらないなどレコード会社の宣伝活動にも貢献する方針だ。
 果たしてエイベックスの狙いは何か。
CDの売行き低迷により音楽業界は低迷しているのが現状である。エイベックスの狙いは独自の路線を打ち出すことによって著作権管理に競争を生み音楽市場の活性化を図ることにあるのではないかと思われる。

5、まとめ

 エイベックスがJASRACから著作権管理業務の一部を系列会社に移転したことは、「JASRACは他業者の参入を妨害している」という最高裁判決に影響を受けていることは明白である。今回のエイベックスのJASRAC一部離脱が成功すればさらなる著作権管理分野における新規参入にもつながり、より一層音楽業界の変化を生み出しそうだ。

※JASRAC:日本音楽著作権協会

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