不正競争防止法、改正へ
2015/08/24 コンプライアンス, 不正競争防止法, その他

1 不正競争防止法とは
先月3日、不正競争防止法の改正案が参議院を通過し、成立した。不正競争防止法という法律に聞き覚えのない方もおられるだろうが、この法律は、例えば商品表示の誤認や冒用(2条1項1号、2号)やドメインネームの不正取得(2条1項12号)から外国公務員に対する贈賄(18条1項)に至るまで、他の法律に規定されていない雑多な行為が不法行為として規定され、それへの刑事罰等も定められている。今回改正されたのは、営業秘密の侵害についてである。
2 営業秘密とは?
営業秘密とは、①秘密として管理されている②事業活動に有用な技術上又は営業上の情報で、③公然と知られていないものと定義されており、①秘密として管理されているといえるためには、当該情報にアクセスできる者が制限され、かつ当該情報が秘密であると認識できるような取扱いが必要とされている。
3 改正の内容
営業秘密として有名なものは、分厚い壁の金庫に厳重に保管されているというコカ・コーラの製造法であろうが、そこまで厳重に管理されていないとしても、営業ノウハウや顧客情報、特許を取得しなかった技術情報などが含まれる。そして、不正な営業秘密の取得、利用について多様な類型(2条1項4~9号)が営業秘密として定められている。今回の改正では、刑事罰の厳罰化、非親告罪化(被害者の告訴なしでも刑事罰が課されうるようになること)の措置が講じられ、民事面においては、除斥期間の延長、原告立証負担の軽減等が講じられた。
これだけ見ると、営業情報の保護を望む企業にとっては、今回の改正はメリットのみのようにも思える。しかし、民事上の責任を問われる行為類型は、故意に営業秘密を取得した場合に限らず、重過失による場合も含まれる。そのため、中途採用の従業員が持ち込んだ情報やノウハウが他社から不正取得された営業秘密であった場合、その情報を漫然と利用してしまうと、不正競争として追求され、刑事罰を課される事態もおきかねない。
また、原告の立証負担を軽減するための措置として、不正競争であることが立証されると、原告の損害額についても推定される規定も設けられている(5条1項、2項、3項)。
さらに、今回の改正では被告が営業秘密を不正取得したことに加えて、当該営業秘密が物の生産方法に係るものであること等を原告が立証した場合には、当該営業秘密の使用が疑われる被告の製品は、被告が当該営業秘密を使用してこれを生産したものと推定されるとされており、一層損害賠償請求のリスクが高まる。
そのため、企業としては中途採用の従業員に対して、営業秘密に接していたのかどうかを確認し、営業秘密を不正に開示、使用しない旨の宣誓書への署名を求めるなど、コンプライアンス体制の構築が一層求められる。
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