精神疾患による労災の現実と企業に求められる対策
2015/03/30 労務法務, 労働法全般, その他
精神疾患による労働災害の現状
2015年3月20日大阪地方裁判所は、うつ病が原因で自殺した元社員の遺族が損害賠償の支払いを求めた裁判で、JR西日本に対し約1億円の損害賠償の支払いを命じた。近年こうした労働災害に関する裁判が目立つようになり、精神疾患による労災認定が年々増加している。今回は、精神疾患による労働災害は、どのような問題点を抱え、どのような基準で認定されるのかを見ていく。
精神疾患による労災の問題点
労働災害とは、労働者が業務に起因して被る災害である。
逆に言うと、プライベートでのトラブルにより精神疾患を患っても、労働災害には当たらない。例えば、離婚や金銭トラブルでうつ病となっても、それは業務に起因していないため、労働災害とは言えない。このように、多くの精神疾患による労働災害の場合、業務に「起因」しているのかが問題となる。
労働災害認定の基準
精神疾患による労働災害の認定基準は3つあり、すべてを満たす必要がある。具体的には、①労働災害申請者が認定基準の対象となる精神障害を発病していること、②認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること、③業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと、である。
基準の①については、認知症や頭部外傷などによる傷害及びアルコールや薬物による障害を除く精神疾患を発病しているかどうかであり、その代表例はうつ病や急性ストレス反応である。
②の基準は、発病前おおむね6か月の間に起きた業務による出来事で、心理的負荷が極度に大きいか否かといった事情や極度の長時間労働があったか否か等の事情により判断される。
③の基準については、業務以外の心理的負荷による発病かどうかを、業務以外の心理的負荷の強度、及び、精神障害の既往歴やアルコール依存状況などの個体側に発病の要因があるかどうかについて判断する。
企業がとるべき対応や予防策
近年、ブラック企業という言葉が世間一般に浸透するほど、労働環境に注目が集まっている。企業は労働者の労働環境の整備を適切に行わなければ、企業価値の毀損につながるため、ぜひとも時間外労働などの労働環境に対して目を向けて欲しいと思う。
具体的に、企業がとりうる精神疾患による労働災害予防の措置としては、試用期間中に勤務状況を正確に把握し、改善点を見つけることが挙げられる。ここで改善点や課題が発見できれば、上司による監督管理によって労働災害を未然に防げる可能性が高まる。
また、時間外労働の管理は非常に重要であり、心理的負荷の強さの判断には時間外労働の長さが重要視される。おおまかな目安として、月の時間外労働が100時間を連続で超えている場合は心理的負荷が強いと判断される可能性が高い。そのため、極端に長い時間外労働を避けるためには、企業側が管理しなければならない。この管理については、自宅での残業も時間外労働として認定された事案があるので、会社内外を問わず残業の量についても企業側ができる限り把握しておく必要がある。
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