グループ企業間の国際取引 適正な価格といえますか?~移転価格税制に関する事前確認制度(APA)~
2015/02/06 税務法務, 租税法, 税法, その他

事案の概要
2014年12月、三井物産はインド子会社のインド三井物産との取引で移転価格課税を避けるため、インドと日本の税務当局が取引内容は適正だと事前に認める事前確認制度(APA)の適用を受け、価格が適正であると認められた。これはインドが2012年に事前確認制度を採用してから二国間で承認される初めてのケースとなった。
今回は、移転価格税制と事前確認制度の概要を紹介する。
移転価格税制とは
移転価格税制とは、内国法人が海外系列会社などと取引する場合、通常の第三者との取引価格(独立企業間価格)と照合して所得を計算し、これに基づいて課税する税制である。
この制度は、法人税率に格差がある二国間で取引を行う場合、税率が低い国にある子会社への販売価格を低くすれば、親会社の所得が低くなることにより税額も少なくなり、グループ全体の税負担を軽減させることができるため、このような取引価格の操作を防止するために設けられている。
事前確認制度(APA)とは
移転価格税制の問題点として、通常の取引価格というものを正確に把握することが難しく、意図せず独立企業間価格に反する取引をしてしまうおそれがある点が挙げられる。
移転価格税制に関する事前確認制度(APA: Advance Pricing Arrangement)は、この問題点に対し、移転価格課税に関する納税者の予測可能性を確保するため、納税者の申出に基づき、その申出の対象となった海外系列会社等との取引に係る独立企業間価格の算定方法等について、税務署長等が事前に確認を行うことをいう。
事前確認には、取引を行う両国の税務当局から確認をとるもの(相互協議を伴う事前確認)、一国内で確認をとるもの(我が国のみによる事前確認)に分けられる。前者は、外国税務当局による課税についての予測可能性も確保できるという利点が有り、後者は、海外系列会社が外国税務当局により課税されるリスクの回避は保証されないものの、相互協議を伴う事前確認に比べ、コストが少なく、処理が早くなるという利点がある。
コメント
事前確認制度は経済協力開発機構(OECD)加盟国の多くが導入し、非加盟国でもタイ、マレーシア、インドネシア等が導入している。グループ企業内での国際取引が増加する中で、本制度の利用による課税リスクの回避するケースは増加するものとみられる。
ただし、本制度を利用する場合には手間や費用も生じるため、企業法務としては本制度を利用すべきか、利用する場合でも我が国のみの事前確認で済ませるか等の検討が必要である。この点については、各国税局に設けられた相談窓口による事前相談も利用しつつ、本制度を活用していくことが望まれる。
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