抱っこひも事故対策に東京都が動く!
2014/10/24 法務相談一般, 民法・商法, 製造物責任法, その他

事実の概要
東京都は、抱っこひも事故が発生している現状を踏まえ、その防止策として、強制力こそないものの、製品の改善を業界・メーカーに対して促そうとしている。具体的な改善案としては、シートの内側に子供の身体を固定するために、ポケットやベルトをつけるなどが挙げられている。
都のアンケートにみる現状
その背景として、東京都が実施した1088人を対象にしてインターネットによる調査によると、抱っこひも使用中のいわゆる「ヒヤリ・ハット」(事故の一歩手前で気づくこと)を経験した者は380人(34.9%)にのぼることが都の協議会にて報告されたことが挙げられる。具体的には障害物との接触が151件、転倒する危険に直面したのが143件、親の転倒が101件となった。
もし、抱っこひもに欠陥があったら・・・・・
抱っこひもに欠陥があり、その場合身体等に損害が発生した場合、抱っこひもメーカーに対し、製造物責任法(以下、PL法)3条および2条2項の「欠陥」に該当し、損害賠償責任が生じるものと考えられる(*)。
PL法によると、メーカーが注意を尽くしていたとしても欠陥により損害が生じれば損害賠償請求ができる。すると、消費者にとって、欠陥品に対してのメーカーへの責任が容易に追及できることになる。PL法が適用されないケースにおいては、民法上の不法行為責任(709条)が問題となる。しかし、民法709条により請求するのであれば損害を生じさせたことについて相手に落ち度があることが分からなければ損害賠償が認められないのに対し、PL法においては相手方に落ち度がなくても請求できず、その負担を軽減する点に大きな意義がある。
コメント
今回、東京都は、行政指導(行政機関が一定の行為を行うようにまたは行わないように要求するもの。ただし、強制されない。)として行うことが予想される。行政指導となると、実現のためにはあくまでも任意の協力が必要となり、従わなかったことを理由として、不利益な扱いをすることはできない(行政手続法32条)。しかし、PL法において3条、2条2項「欠陥」の判断基準として、都のこのような要請の内容が判断の基準ともなりうる。今後、メーカーは、損害賠償を請求されるリスクを考慮して、強制でないとはいえ都の要請に従って抱っこひもを製造し、東京都外にあるメーカーもこの要請の内容を参考にして製造するものと予想される。
*PL法
(定義)
第二条
2 この法律において「欠陥」とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう
(製造物責任)
第三条 製造業者等は、その製造、加工、輸入又は前条第三項第二号若しくは第三号の氏名等の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りでない。
参考サイト
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