東電に対し4900万円の賠償命令
2014/08/28 訴訟対応, 民事訴訟法, その他
事案の概要
福島地方裁判所は26日、2011年3月の福島第1原発事故に伴う避難生活中に自殺した女性の遺族に対し、4900万円の賠償を命じる判決を下した。東京電力に対し約9100万円の損害賠償を求めた訴訟で、女性の自殺と原発事故との因果関係が認められるとして、東電の賠償責任を認めた初の司法判断となる。
自殺した女性の一家は原発から40キロ離れた福島県川俣町山木屋地区の養鶏場で働いていた。事故後の11年4月、放射能による汚染を町が発表後避難を余儀なくされ、養鶏場は閉鎖、生活の糧を失い家も失った。住宅ローンの支払いも1400万円以上残っていたという。
女性は一時帰宅をした2011年7月に体にガソリンをかけて自殺した。
潮見裁判長は「女性は福島市内のアパートに避難して以降、うつ病を発症していた可能性が高く、いつ帰還できるか見通しが持てない状況で強いストレスを受けていた。避難生活の再開が迫っていたことが直接の契機になって自殺したと認められ、自殺と原発事故との間には因果関係がある」と指摘した。
コメント
原発事故後の自殺を含む賠償問題を巡っては、国による原子力損害賠償紛争解決センターの和解仲介手続き(ADR)を利用して、話し合いで決着を付ける場合が多いという。
原子力損害賠償紛争解決センターによる和解仲介手続きとは、被害者の申立てにより弁護士の仲介委員らが原発事故の損害にかかる紛争解決についての和解仲介手続きを行う制度であり、申立て・和解の仲介に関する手数料は無料である。これまで居住者の避難費用、精神的損害などの賠償事例や、飲食業を営んでいた申立人の避難費用、営業損害等の損害賠償事例等が解決されてきている。
今回も裁判所は双方に和解を勧告したが、遺族側は判決での責任明記を望みこれに応じなかった。判決による賠償命令を得ることは経済的賠償よりも、福島第一原発事故に伴う被害についての東電の責任を明確化するという意味合いが強いと言える。
東電が控訴する方針であるかは不明であるが、今回の判決を受け、今後判決による賠償命令を求める同様の訴訟が活発化することが予想されよう。
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