中国-著作権法改正案でフェアユース条項採用へ
2014/08/26 知財・ライセンス, 著作権法, その他

事案の概要
中国国務院立法課は2014年6月6日、パブリックコメント募集のため、著作権法改正草案を公開した。
この改正案の特徴は、フェアユース規定を著作権の制限規定として採用したことにある(改正案第43条第13項)。
フェアユース条項とは
フェアユース(公正利用)条項とは、一定の要件を満たした公正な著作物の使用は、著作者の許諾がなくとも著作権を侵害しない旨の規定である。
著作権の制限規定の中では、具体的な行為を定めない一般条項であることに特徴があり、適用範囲が不明確という欠点がある反面、社会状況の変化に柔軟に対応できる利点がある。
アメリカ著作権法では第107条で規定されており、(1)その使用が商業的なものか、非営利の教育目的かどうかを含む、その使用の目的及び性質、(2)その著作物の性質、(3)その著作物全体に関して使用された部分の量及び実質性、(4)その著作物の潜在的マーケット又は価値に対するその使用の影響、の各要素を総合的に考慮して、その成否を判断する。
フェアユースの成否が問題となった事例としては、アメリカのベータマックス事件がある。これはテレビ番組に関する著作権を有するユニバーサルが、ソニーに対し、家庭用VTR機器によるテレビ番組の録画は著作権侵害であり、当該VTR機器を販売するソニーも著作権を侵害するとして、差止めと損害賠償を求めた事件である。
アメリカ最高裁は、家庭内でのタイムシフト(テレビ番組を録画し、視聴後消去する方法)は、無料で視聴することが勧められている作品を視聴者が見ることを可能としている非営利的な利用であること、非営利的利用が著作権法違反をするには、その利用が有害であること、あるいはその利用態様が広く普及した場合に、将来損害が発生することについての可能性を著作権者が立証する必要があるところ、その証明がされなかったことから、ソニーのVTRは侵害でない利用が相当程度に可能であり、ソニーによる一般公衆へのこのような機器の販売は、ユニバーサルの著作権の侵害にはならない、とした。
一方、日本においては、著作権法第30条以下で個別の制限規定を設けるにとどまり、フェアユース条項に相当する一般条項は採用されていない。このため、個別の条項で対応できない場合、権利濫用(民法第1条第3項)や公序良俗違反(民法第90条)、あるいは黙示の許諾を認めることで対応することになる。
コメント
フェアユース条項は、利用者側からすればフェアユースにあたるならば、萎縮することなく著作物を利用できるメリットが存在する。
ベータマックス事件は、新たな事業についてフェアユースによる著作権の制限が認められるか否かが問題となった事例である。
一方、著作権者の側からは、著作権侵害の成否が条文上からは明確に判断できないことから、著作権の制限が広くなる可能性があり、権利行使に慎重にならざるを得ない場合が考えられる。これは、日本の著作権法においてフェアユース条項が採用されていない理由ともなっている。
フェアユース条項が中国で採用された場合、著作権侵害事件においてその成否が争点となることは当然予想される。条文だけではなく、フェアユースに関する各国の先例やガイドラインを参照することにより、その範囲を理解することが必要だろう。
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