【Amazon】無人機宅配の実用化と問題点
2014/08/26   法務相談一般, 民法・商法, その他

事案の概要

 2014年7月11日、米インターネット通販大手アマゾン・ドット・コムが、配送に使う小型無人機の屋外試験飛行を米連邦航空局(FAA)に申請したことが明らかになった。これまで屋内施設や米国外での試験にとどまっており、実用化に向けて一歩を踏み出した。開発中の無人機はヘリコプターのような羽根が付いており、時速50マイル(約80キロ)以上で飛行が可能。アマゾンの提供商品の86%をカバーする5ポンド(約2.3キロ)までの積み荷を運べる。アマゾンは顧客の注文を受けてから30分以内に無人機が商品を届ける新サービスを2015年にも展開することを目指している。申請書類によると、認可が得られれば米国以外の各国でも導入したい考えだ。

コメント

 アマゾンは2013年12月に、小型電動ヘリを使った宅配構想「アマゾン プライムエアー」を発表したことが記憶に新しい。今回は、屋外での無人機の試験飛行に挑戦するものである。無人航空機の商業利用への実用化は、配達だけでなく、広い大学構内を案内させたりするなど、暮らしの幅が広がる。しかし、無人機を屋外で飛ばす上で、その安全性やプライバシーの侵害の危険が問題となっている。
 安全性については、FAAが、フロリダ州空港近くで民間航空機と正体不明の無人機が衝突寸前のニアミスを起こしていた事実を公表したため、安全面に不安がある。航空輸送事業を監督するFAAは安全を確保するため、これまで無人機の利用を警察などに限っていた。しかし2014年6月に石油大手BPに対し、アラスカ州の施設管理に無人機使用を認め、商業利用を解禁。アマゾンは今回、空港や住宅地から離れた私有地で飛行させることを条件に認可を求めた。そのため、試験の段階では、民間空港機との衝突の危険はないが、実用化をするにあたっては、民間航空機との衝突や墜落による民間人への危険性を回避することが今後の課題となってくるだろう。
 プライバシーについては、常時小型電動ヘリにカメラを取り付けて市街の上空を飛行することになるので、一般人の私生活をのぞき見されない権利(プライバシーの権利)を侵害するおそれがある。現在、無人航空機によるプライバシー侵害の規制はされていない。しかし、FAAは、2013年2月に試験区域に適用するプライバシー要件を公表した。この要件には、運営者がプライバシー・ポリシーを策定し公表すること、試験区域で無人航空機を飛行させる者に収集データの利用と保管についての計画書作成を義務付けること等が規定されている。このように、無人航空機を運営する者の厳格かつ適切な個人情報管理が求められる。
 日本では、農薬散布のために無人航空機がすでに利用されているが、商業利用はなされていない。現在、アマゾンと取引している日本の配達業者は、安い対価で大きな負担を強いられているが、無人航空機による配達を導入することにより、宅配業者の負担が削減されるというメリットがある。
 しかし、日本では無人航空機については規制がなく、上記と同様の問題が生じる。航空法では、飛行機は必ず高度150メートル以上の飛行を義務付けられているため、無人機航空機が150メートルよりも低い高度で飛行していれば、飛行機との衝突の危険はない。ただ、墜落の危険や、ビルなどの高い建物の接触・衝突の危険は依然として払拭されない。特に埋込式の電線が多いアメリカと異なり日本には電柱が多く、衝突の危険性が高い。そのため新たな法規制の必要がある。
 無人機配達の実用化の実現に向けて上記の課題を解決することがアマゾンの構想する今後の新しい生活環境の構築に向けて重要となる。

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