電力自由化は日本経済を救うのか、改正電気事業法が衆院委員会を通過
2014/05/19   法務相談一般, 民法・商法, その他

事案の概要

2016年を目処に電気の小売業への参入の全面自由化を行うため、大口利用者に限らず一般家庭など小口利用者への供給についても登録を行えば誰でも電気を販売できる規定などを含んだ電気事業法等改正案が、16日衆議院経済産業委員会を通過した。本改正案は昨年11月に成立した電気事業法改正において定められた、2016年目処の電気小売業自由化のための具体的な法律を2014年中に定める旨の規定を受けたもので、小口需要への自由化以外にも、電力の先物取引や再生可能エネルギーの調達に関わる改正も盛り込まれている。

電力自由化に向けて

昨年11月の電気事業法改正で掲げられた電力の安定供給、料金の抑制、需要側の選択肢と事業者の機会の拡大という電力システム改革の目的を受け、本電気事業法改正では主に以下の三点が盛り込まれた。

(1)電気小売業への参入の全面自由化
(2)安定供給確保のための措置
(3)需要側の保護のための措置

(1)については、これまで新規参入の規制として既存の事業者が小口利用者などについては地域ごとに独占を行っていたため、この規制を撤廃する改正などが盛り込まれる。そして(2)については電気の配送電事業者への安定供給の義務や、電気小売事業者へ供給力を維持する義務やそれらを保証する制度、(3)については自由化後しばらくは利用者への供給を確保するための措置を継続することや電気小売事業者による利用者への契約時の説明義務が定められることとなる。

その他関連する法律の改正も

上記の電気事業法の改正に加え本改正案では、今後の電力の取引量の拡大に備えて電気も先物取引ができるようにする商品先物取引法の改正や、既に定められている再生可能エネルギーの買取義務制度を上記の小売自由化に適した形にするための再エネ特措法(※1)の改正が一緒に盛り込まれている。

(※1)正式名称は「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」

コメント

一連の原発問題に関連して、稼動できない原発の発電量を補うために利用している化石燃料価格の世界的な高騰により、今後電気料金がますます上がることが懸念されている。こうした背景にあっては、電力の自由化は競争原理の導入による料金の低下を期待できるので利用者としては望ましい。だが電力の安定供給の観点のない急激で過剰な自由化は、利益を追求する発電事業者がコストがかかる公共の送電線等の保安を怠ることによって、2003年のニューヨーク大停電(※2)のような状況も引き起こしかねないことは留意すべきだろう。利用者としても新規事業者としても自由化は歓迎されるが、実際の実行の段階においては慎重な議論を求めたい。

(※2)ニューヨーク大停電(2003)とは2003年の8月14日にアメリカ北東部8州とカナダ南東部1州で発生した米国史上最大の停電である。当時アメリカは「電力の自由化」により全発電事業者に対して送電網を自由に開放していた。一方で送電網整備はコストがかかる割には公共利用されるため投資が行われず、結果として増加する発電事業者に対し十分な送電網の整備が行われなかった。そのために負荷がかかった一部の送電線でトラブルが発生したという背景が考えられている。

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