ADRの更なる利用促進へ~ADR法に関する検討会報告書(3/17提出)の内容~
2014/05/07 法務相談一般, 民法・商法, その他

法務省のADR法に関する検討会は3月17日「ADR法に関する検討会報告書」を取りまとめて法務大臣に提出した。
一般に裁判は問題が解決するまでの期間が長く、手続きも複雑であり、費用も高額になりがちであるから、裁判外紛争解決手続(ADR)が紛争解決手段の選択肢となる。
このADRの利用促進のために、政府から認証を受けた民間事業者が紛争解決手続きを行う認証ADR制度が2007年4月施行の「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(ADR法)」の下で開始された。
今回の報告書には、認証ADR制度の更なる利用促進のための様々な提言が盛り込まれている。以下では本報告書の内容を概観する。
ADRの検討課題
①現在までに120以上の事業者が認証を得て、ADR業務を行っているが認証事業者が存在しない業界も存在する。
新規のADR分野に参入しやすいように当該業界を所管する官庁や、地方公共団体等が、情報提供や新規参入費用の面も含めて、より積極的な働きかけを行う必要がある。
なお認証事業者が存在しない分野として、インターネット、モバイル機器関連、レストラン、コンビニエンスストア、公共交通機関等が挙げられている。
②認証ADRによる和解の実効性を確保すると言う観点から、和解に執行力を与えるか否かが議論されている。
現状においても、仲裁合意、公正証書、簡易裁判所の即決和解の利用等で和解の実効性を確保するための方策が講じられている。
しかもADRにおいては、和解内容の不履行の問題が生じにくいことから、ADRの特長である自由な話し合いに対する萎縮効果を生みかねない、執行力の付与には否定的な意見が出されている。
一方で、一部のADRに対して、当該事業者が執行力の付与を選択できる形であれば認められるとの意見も出されている。
③ADRに携わる人材の質的向上の観点から、仲介手続きの実施者や、その他ADR事業者職員の研修制度を充実させる必要がある。
もっとも研修の法的義務化については、過度の負担を課すことになるから慎重な検討を要する。
④時効の中断について、現行法上は紛争解決手続きにおける請求時が基準点とされている。
とすると、請求の内容が具体化されていない時点では中断効が生じず、請求内容が具体化されないまま手続きが進行した場合には、時効が完成してしまう。
そこで手続実施依頼時に、請求内容を具体化することを条件に、時効中断効を認めるべきであるとの意見がある。
もっとも、相手方保護の観点から時効中断効の範囲拡大には慎重な意見もあり、仮に拡大するにしても手続依頼時における請求内容の具体化を担保する制度の在り方が検討課題となる。
⑤複雑な論点、争点を含んだ事案に関しては認証ADRにおいても、弁護士、司法書士等の代理人を選任する必要がある。
ADRを利用することに関してコスト面を重視する人も多いことからすれば、代理援助(代理人に支払う報酬等の立替)の利用促進を法改正も含めて検討する必要がある。
その他にも、ADR事業者と各種相談機関や裁判所との連携強化、守秘義務の法定などが検討課題として挙げられている。より詳しい内容については下記のサイトを参照されたい。
関連サイト
なお、認証ADR事業者の詳細についてかいけつサポート(法務省HP)関連コンテンツ
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