ウィンドウズXPサポート終了、利用者の今後の対応
2014/04/10 コンプライアンス, 情報セキュリティ, 民法・商法, 製造物責任法, その他

事案の概要
米マイクロソフト社の基本ソフト(OS)である「ウィンドウズXP」の日本でのサポートが9日終了した。2001年10月25日のリリース以来実に12年以上にわたるXPの歴史が幕を閉じたことになる。これにより以後発覚した「ウィンドウズXP」の脆弱性については修正がされなくなり、「ウィンドウズXP」上で稼働する米マイクロソフト社製以外のソフトウェアについても順次サポートが終了していく見通しとなっている。長きにわたり人々の生活・経済を支えてきたOSであるがゆえに利用者は多く、これまでも他のサポート中のOSに乗り換えるように独立行政法人情報処理推進機構をはじめとして諸機関から勧告が繰り返されてきた。
ここで仮に今後サポートが終了したOSを使用し続け、コンピュータウィルスやハッキングなどによる損害が発生した場合、賠償を求められるかという問題が生じる。民法上の不法行為損賠や契約責任による予備的請求に加え製品による損害として製造物責任法(PL法)による賠償が考えられるが、PL法の第2条第1項で、対象となる「製造物」とは、「製造又は加工された動産」とされる。PL法が提案された当時の政府見解によれば「無体物は、動産に該当しないから、本法の対象となら」ず、ソフトウェアはPL法の対象にならないとしつつも「ソフトウェアを組み込んだ製造物については本法の対象と解され」るとしている。(注)プレインストールの形で製造物の引き渡し時にすでにソフトウェアが組み込まれているOSにおいてはこの点が重要になってくるが、これについて学説では「ソフトウェアに欠陥があった場合、ハードウェアとソフトウェアのメーカーが同一であれば製造物責任法の対象になるが、ハードウェアとソフトウェアのメーカーが同一でなければ、ソフトウェアに欠陥があっても製造物責任法の対象にならないと考える説、プレインストールされることによって製造物の一部になったとする説(岡本佳世ほか「企業のPL対策」(商事法務研究会、1995年)67頁)などと対立が生じており、定かではない。
岡村久道:製造物責任法(PL法)入門参照
なお、プレインストールではなくCD-ROM等の物理的外部記憶装置に入れられているソフトウェアに関しては、ハードとソフトが一体として機能するわけではなく、あくまでハードが入れ物に過ぎないものであるため製造物責任法の対象にはならないという指摘もなされている。(上記URL参照)
(注)経済企画庁国民生活局消費者行政第一課外執筆・編集『製造物責任法の解説』(平成6年8月)五項
コメント
無体物たるソフトウェアへの製造物責任については様々な議論があるところである。しかしながらPL法が無体物を対象にしていない以上ソフトウェアそのものに現行の法制度で製造物責任が及ぶことは考えにくい。また仮にプレインストールのソフトウェアにつき製造物責任が認められたとしても、その請求はソフトウェア会社に向くのか、パソコンの製造業者に向くのか、それとも両者かなどといった問題が残る。今後の法整備が待たれるところであるが、ソフトウェアはその性質上常に外部からの脅威に晒され、脆弱性も予見しにくいという問題もあるため無理に責任を広くすると開発が萎縮・阻害されるおそれもあるということは留意すべきところであろう。とりあえず現状の利用者の対応としては、他のインターネット犯罪の踏み台とされる恐れや情報漏えい等のリスクを踏まえサポートのあるOSに変えることが賢明であろう。
関連条文
製造物責任法
(平成六年七月一日法律第八十五号)
第二条 この法律において「製造物」とは、製造又は加工された動産をいう。
第五条 第三条に規定する損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び賠償義務者を知った時から三年間行わないときは、時効によって消滅する。その製造業者等が当該製造物を引き渡した時から十年を経過したときも、同様とする。
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