違法DLへの刑事罰適用から1年、問われる規制の実効性
2013/10/03 知財・ライセンス, 著作権法, その他

事案の概要
昨年10月1日通常国会で成立し施行された改正著作権法によって違法ダウンロードへの刑事罰適用が定められてから、丸1年が経過した。
まず、改正著作権法により付された刑事罰の具体的内容は、CDやDVDといった有償著作物につき、私的使用目的であっても、著作権・著作隣接権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音・録画を故意で行った場合に、親告罪を前提として刑事罰を科すというものだ。改正の背景には、インターネット環境の家庭への一般的普及と回線速度の向上を背景とした、ファイル共有ソフト利用によるデジタルコンテンツ違法流通への対応というニーズがあった。
そして、一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)の発表では、2013年1月時点調査においてWinnyに接続しているノードが1日あたり約2万台(2012年3月調査では3.4万台)、Shareが約5.9万台(2012年3月調査では9.2万台)、PerfectDarkに接続しているノードが1日あたり約3.4万台(2012年3月調査では4.9万台)へと大幅に減少したというデータが出されており、改正著作権法による違法ダウンロードへの刑事罰適用は、ファイル共有ソフト利用者数を減少させることとの関係では一定の効果を収めたものと考えられている。
しかし、ファイル共有ソフト上における有償著作物の違法流通割合には大きな変化は見られないとともに、CDやDVDの正規品売上げは去年10月から今年6月までは5%の微増、今年1月から8月でみると7%の減少となっており、「違法ダウンロードに刑事罰を科したから」「デジタルコンテンツ業界の売上げが回復した」といえるような状況とはなっていない。
更に軽容量でデータを共有できる音楽配信に到っては、去年10月から今年6月までで前年比24%の売上げ大幅減となっている。
コメント
これらのデータに照らすと「タダなら聞くけど(見るけど)買ってまでは見ない」というスタンスのファイル共有ソフト利用者が相当数存在していたという見方もできそうだ。長引くデフレ状況下にある日本経済における消費者の行動には、著作権侵害意識の向上という課題が存在することはもちろんだが、バブル期から変わらないCDの値段を含めてデジタルコンテンツ業界におけるビジネスモデルの再構築を含めて、今後も議論は続いていくことになりそうだ。
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