ケアサービス付き賃貸住宅建設促進へ
2013/08/22 法務相談一般, 民法・商法, 住宅・不動産

事案の概要
厚生労働省は、特別養護老人ホームなどの高コスト型の介護施設の増加による財政負担の拡大を抑制するために、ケアサービス付き賃貸住宅への移行を支援する方針を打ち出した。
これは、高齢者向けの介護サービスに関して、大都市郊外でケアサービス付き賃貸住宅の整備を加速することで、病院・施設での介護サービスから、自宅にいたまま世話をするいわゆる在宅型の介護を中心に据えようとするものである。
具体的には、同住宅に引っ越した高齢者の介護・医療費を、転居前の市町村が負担する「住所地特例」制度の対象とすることを検討している。
現在、高齢者がケアサービス付き賃貸住宅を利用した場合、移り住んだ先の市町村が介護サービス費用の9割を負担することになっている。その場合、移住先の市町村の財政負担が大きくなってしまう。
そこで、もともと高齢者が住んでいた市町村が介護・医療費用を負担する「住所地特例」制度の対象にケアサービス付き賃貸住宅を加えることで、市町村間での負担の偏在を出来る限り少なくし、同住宅の建設の促進を図ろうとするものである。
コメント
住所地特例は、介護保険の被保険者がそれまでの居住地から離れた場所の介護保険施設などに入所した場合、入所前に居住していた市町村が介護・医療費を負担する仕組みである。
この制度は、現在、有料老人ホームについては、適用があるものの、ケアサービス付き賃貸住宅については、
介護、食事の提供等のサービスを行っており、かつ、以下の①②いずれかを満たす場合にのみ適用の対象となる。
① 特定施設入居者生活介護の事業を行う事業所としての指定を受けている場合
② 賃貸住宅に該当しない場合(住居の契約とサービスの契約が一体となっていないような場合)
この住所地特例の適用をケアサービス付き賃貸住宅に拡張し、同住宅の建設を促進することで、社会保障費の負担軽減につながるのであれば、この方針は望まれるべきものと言える。
しかし、社会保障費の負担のみが問題となるものではない。ケアサービス付き賃貸住宅は単なる賃貸住宅に留まらないものであり、住宅を利用する高齢者の身体状態の重度化や、認知症の人への対応などの問題が生じる。
もし政府が社会保障費負担の軽減のための施設拡充にばかりに目を奪われ、高齢者に対するサービスの質の確保や良質な人材の育成についても適切な施策を打たなかったとすれば、そのことによる不利益は介護サービスを受ける高齢者が受けることになる。
そのようなことがないようにするためには、施設拡充のみならず、介護職員のサービスの質の向上、それと同時に職場環境や待遇改善なども同時に考える必要性がありそうだ。
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