シンガポール政府、労働法規の改定に動き出す
2013/07/29 海外法務, 海外進出, 外国法, その他

事案の概要
シンガポール人材開発省(Ministry of Manpower、以下MOM)は、雇用法(Employment Act、以下EA)及び、外国人材雇用法(Employment of Foreign Manpower Act、以下EFMA)の見直しに向けて、国民からの意見公募を開始した。
労働者保護を強化するEAの改正については、2013年3月に行われたが、今回の見直しは、企業にとっての雇用の調整弁のような立場におかれている労働者の保護を強化することを目的としている。
MOMによれば、契約社員や、外注で雇用されている者、あるいは低賃金で働いている労働者などが主な対象となる見込みである。
EAの改正のポイントとしては、以下の通りである。
①事務職労働者が労働時間に関する保護(残業代の支払いなどに関係する)を受けられるようになる、基本月給の基準を2000ドルから2500ドル未満に引き上げる。これによって、これまでより、15万人以上多くの労働者が、労働時間に関する保護を受けられるようになると試算されている。
②雇用条件の文書化や、給料の支払いの電子化を義務付けることが検討されている。こうすることで、雇用条件を巡っての雇用主と従業員の紛争が回避され、給料の支払いも、適宜になされることが期待される。
また、EFMAについては、近年、シンガポールで働く外国人が多くなっていることを受け、人材流入の適正化と、質の向上を意図して、法改正の声が高まっていた。
外国人を雇用する、雇用主は特別な義務が課されているが、その義務を巧みに回避する者も多く、より重い罰則を設けるなどして、法令を遵守させる方策が検討されていた。
こうした背景から、2007年にEFMAの改正が行われ、外国人雇用主に対する規制が強化されるに至り、2012年11月から施行されている。
今回の改正議論では、どのような条件下であれば外国人労働者は、雇用主を変更することが可能かということが検討課題となっている。
意見公募は、10月30日まで行われ、MOMは2013年後半にも法案を成立させ、2014年の施行を目指している。
コメント
シンガポールでは、近年、外国からの移民の数が増加し、それに対する国民の反発が強まっていた。上記、EFMAの改正もこうした流れの中にあるといえる。
規制強化の成果は数字にも現れており、シンガポールにおける、2012年の外国人労働者の新規就労者数は、約7万人と前年比で17%減少しているとの調査結果もある。一方、国内就労者は、前年比56%増の約6万人と増加し、国内の雇用対策としては、功を奏しているといえる。
しかし、シンガポールでも少子化が進んでおり、将来的な労働力の確保という観点からすれば、外国人労働に対する過度の規制強化は、マイナスに作用するおそれがある。
事実、規制強化により、外個人労働者の人材確保が困難となり、事業継続が困難となった企業もあると聞く。外国人労働者に対する需要は、未だ多くあるだけに、移民対策との兼ね合いは長期的な視点で見ていく必要がある。
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