製紙業のヨンパ、国内CO2排出枠購入!
2013/07/18 法務相談一般, 民法・商法, メーカー
事案の概要
製紙業のヨンパは、主に企業向けに販促用ティッシュを製造している会社であり、最終製品全体で年間3500㌧の二酸化炭素(CO2)を排出している。この度、製造で排出する最終製品を対象に、製造で排出するCO2量に相当する排出枠(クレジット)を購入する。
従来、製品単位で排出枠を購入する例はあったが、全ての最終製品で排出分を相殺するのは製紙業界で初めてである。
同社が利用する排出枠は、経済産業省などが所管する「国内クレジット制度」に基づくもの。CO2の算出とクレジット取引の仲介を担うカーボンフリーコンサルティング(横浜市)が、CO2削減を実施した各企業から直接買い取ったり、国の保有枠から仕入れたりして取りまとめ、ヨンパに販売する。
排出枠は、国内企業や自治体が照明を発光ダイオード(LED)に切り替えたり、太陽光発電を手掛けたり、ボイラーの燃料をバイオマス(生物資源)にしたりすることで得たものである。ヨンパは、排出枠を1㌧あたり660円で購入し、総取得費用は約230万円となった。
ヨンパは、これまでにも排出枠の購入実績はあるが、海外で創出された排出枠を用いていた。しかし、今回、国内の排出枠に切り替えるとともに、購入量も拡大させることで、顧客企業に対し、環境への取り組みを分かりやすく示すことをその狙いとしている。
コメント
排出権売買の際に支払われた代金額は、地球温暖化問題の対策費用として使われる。環境法における、経済的手法の典型例である。
ヨンパのように、海外から国内の排出枠の購入に切り替えることによって、その資金を国内の中小企業における排出削減の取り組み促進に振り向けることが可能となる。
国内の排出枠購入を積極的に行うことで、地球温暖化問題について積極的に取り組む企業であることについて、顧客企業や一般消費者に、よりイメージを持ってもらいやすくなり、企業アピールにもつながるだろう。かかる動きは、国内の環境負荷低下技術の発展により寄与するに違いない。
知識
■国内クレジット制度
企業や自治体などが二酸化炭素削減活動を実施し、減らすことのできた分を、「排出枠」として認証する仕組み。狙いは、資金を還流させて、環境と経済を両立させることにある。13年春からは、「オフセット・クレジット(J-VER)制度」となっている。
■地球温暖化対策推進法(以下、温対法)とは?
地球温暖化防止京都会議で採択された「京都議定書」(国内対策に最大限努力してもなお約束達成に不足する差分について、途上国で実施する温室効果ガスの排出削減プロジェクトからの削減量等を自国の削減量に算入する)を受け、国や地方公共団体、事業者、国民が一体となって地球温暖化対策に取り組むための枠組みを定めた法律である。
日本は、温室効果ガスの排出量を1990年比で6%削減する義務を負うことになった。温対法では、この削減目標を達成するために、国、地方公共団体、事業者、国民のそれぞれの責務と役割を具体的に定めている。
■同法の主要改正
○2005年改正
温室効果ガスを一定量以上排出する企業に対して、排出量(活動量 × 排出係数)の算定と報告、公表を義務づけたのである(同法第21条の2)。排出枠の設定こそないものの、この法改正は企業に厳しい自主削減計画の策定・実施を促すことになった。
○2006年改正
京都メカニズムを活用するための枠組みが整備された。国や企業は、海外の温暖化対策によって獲得した排出権を取引きするための口座を開設し、国が作成した口座簿によって排出権の取得や保有、移転などを行える(同法第29条以降参照)。この結果、日本経済団体連合会が策定した環境自主行動計画の目標を達成するために、企業が排出権を売買することが可能になった。
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