タイで強化されるタバコ規制
2013/07/09 海外法務, 海外進出, 外国法, その他

事案の概要
タイ保険当局は、タバコのパッケージに健康への警告表示を載せるよう定めている規定の改正を行った。これは、同国内で流通するタバコのパッケージに記載する警告表示を現状の50%から85%へ拡大することを求めるものだ。順調であれば、10月から施行されることになる。
これを受けて、米タバコ大手フィリップモリス社は、同改定は、タバコに対するネガティブな印象を高め、同社の商標権を侵害するものだとして、タイ当局を提訴した。タイのタバコ小売1400業者を代表する、タバコ貿易協会(Thai Tobacco Trade Association)は同規定の撤廃を強く求めている。
この規定を巡っては、日本のJT(日本たばこ産業)も、商標権、表現の自由を侵害するものであるとして、タイ政府に対して、訴訟を提起している。
タイにおいては、タバコへの規制が段々と厳しくなっているものの、取り締まり当局のデータによれば、喫煙率は、おおむね27%前後の横ばいで推移しており、あまり減少傾向は見られない。当局は、健康意識を高め、喫煙者数を減らすことに積極的であり、今回の基準の見直しは、そうした背景があるといえる。
警告表示の効果がどの程度のものであるかは、見解が分かれるものの、オーストラリア政府の調査によれば、消費者にタバコの害に対する知識を付けさせる効果があるだけでなく、喫煙に対する動機付けも断ち切る効果があるとされている。
EU諸国においては、健康への警告表示の比率を最小で65%にするという新たな基準が近時設けられた。タバコの規制に厳しいとされるオーストラリアでさえ、パッケージの表裏合わせた、警告表示の比率は、82.5%である。
警告表示が85%に達するようになれば、メーカーが商標やロゴを入れることが出来るスペースは、15%にすぎないことになる。これが世界的な標準に影響を与えるとすれば、タバコ産業にとっては、大きな痛手である。
企業が収益を上げれば、税収が増大し、国の財政にとっては助けとなる。しかし今回のタイ政府の対応は、タバコの害を放置し、医療費の増大を招く危険の方を回避しようとする姿勢の現れであるといえる。
コメント
タイにおけるタバコの規制は、年々厳しくなっており、上述の警告表示の拡大のみならず、販売方法や喫煙場所の制限も厳しくなっている。また他にも、アルコールを企業の敷地内で飲むことを規制する動きもある。
これは、健康面を考慮するということのほかに、宗教上の背景もある。タイは仏教国であり、その宗派によって違いはあるものの、その教義を厳格に適用しようとする動きもある。
日本においては、成人男性の平均喫煙率は、32.7%、女性は10.4%となっている。(平成24年JT調べ)この数字は諸外国と比べても高いという指摘がある。
タイに進出する日系企業も多いだけに、企業の管理部門担当者は、当地の法的動きだけでなく、政治、宗教的背景にも十分目を配る必要がある。
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